[オピニオン from CIO賢人倶楽部]

システム子会社の吸収合併、経験を基にその利点を考察する

八十二銀行 プロジェクトエグゼクティブ 佐藤宏昭氏

2025年3月19日(水)CIO賢人倶楽部

CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、八十二銀行 プロジェクトエグゼクティブ 佐藤宏昭氏からのオピニオンである。

 情報システム子会社を今後どうするのか? 現状のまま維持・拡大を模索するか、他社へ売却するか、それとも本体に統合するか?──これは多くのCIO、システム責任者が頭を悩ませていることではないでしょうか。私が勤務する八十二銀行でもさまざまなストーリーを検討したうえで、2023年10月に私が代表を務めていたシステム開発子会社(八十二システム開発)を本体に吸収合併しました。

 それから1年あまり、合併による効果や組織・人材の変化はどのようなものだったのでしょうか?ここでは、この期間を振り返り、それらについて整理してみます。あわせて合併の効果を最大限に引き出すための取り組みや、今後の展望についても考察します。

システム子会社合併によるメリット

 まずは合併による直接的な効果やメリットについて。大きかったのが、意思決定がスムーズになり、組織全体の一体感が増し、運営の効率化が進んだことです。子会社という独立した階層をなくし、指揮命令系統を一本化するのが合併の狙いの1つでしたので当然ですが、ビフォー/アフターの違いは大きいと思います。

 具体的には、銀行本体が企画した案件を子会社が開発する分業体制の接点で発生していた文書化や確認、承認プロセスが大幅に簡略化されました。その結果、意思決定のスピードが向上し、システム化案件の組成から実現までの迅速な対応が可能となりました。

 第2は、経営資源の集中です。これはまだ道半ばでもありますが、システム子会社が持っていた知識やリソースを銀行に取り込むことで、全社的な戦略への一体化が実現しつつあります。これにより、全社的な視点でのシステム戦略の立案が可能となり、経営資源の最適な配分に取り組んでいます。

 副次的な効果としては、コスト削減があります。合併により、開発業務にかかる見積り、発注、費用精算がなくなり、重複する業務やリソースを統合することができた結果、事務プロセスが大幅に簡略化され、スピードアップが実現しました。また人事総務など管理部門の人件費を中心に、子会社運営に伴う管理費用を削減できました。管理部門の担当者はグループ内外でスキルにあったポジションを得て活躍しており、全体のコスト削減に寄与しています。

本体も含めた組織のスキルアップを図れる

画面1:八十二銀行は、IT人材の強化を目的に「デジタル・システムコース」を設立した
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 次に人材の変化について説明します。従来は出向という形で本体と子会社の人材交流を行っていました。合併で組織の壁が取り払われたことで、人材やノウハウの活用が容易になりつつあると思います。加えて本体も含めた組織のスキルアップを図りやすくなり、少しずつではありますが、競争力が向上していると感じています。

 そして採用面です。合併に合わせて銀行本体の人事制度改革の一環として、本部要員としての「デジタル・システムコース」(画面1)を設けて処遇面の向上を図りました。そのことが人材採用によい影響をもたらしています。例えば、現在進行中の採用活動では、理工系を中心に応募者数が子会社単独のそれを大きく上回っています。デジタル技術に関心のある若手人材の確保を進めれば、組織の活性化につながることが期待できます。

 一方、合併に前後してシステム子会社の社員の退職が一定程度発生しました。しかし、会社都合の合併なのでそれは織り込み済みでしたし、従来からも「外部で経験を生かしたい」との退職申し出は前向きに捉えてきたため、基本的には強く慰留していません。組織の新陳代謝が進み、新たな人材の流入が促進されるとも考えています。

●Next:合併プロジェクトを経て、八十二銀行がこの先のIT/DX施策で目指すこと

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