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[ユーザー事例]

富士通が「テレワーク勤務制度」を正式導入、実効性の高い働き方改革を実現するための施策とは?

2017年3月30日(木)森 英幸(IT Leaders編集部)

富士通は2017年4月から、働き方改革の一環として全社員3万5000人を対象に「テレワーク勤務制度」を正式導入する。本稿では、正式導入に至るまでに同社が行ってきた取り組みやテレワークを定着させるために行う施策について紹介する。ICTのトップベンダーの1社である富士通の取り組みは、これから働き方改革を推進する企業にとって、大いに参考になるだろう。

仮想デスクトップでテレワーク環境を整備

 富士通の「テレワーク勤務制度」は、デジタル化への対応やダイバーシティの推進、長時間労働の縮減を目的に、自宅や通勤時間中の業務も労働時間としてカウントできる仕組み、制度を用意するもの。働き方改革において、ICTによる支援の重要性が高いことは言うまでもなく、どの技術を採用するかの取捨選択には大いに頭を悩ませるところである。富士通では、技術的には仮想デスクトップ(VDI)とシンクライアント端末、グローバルコミュニケーション基盤の3つを柱にテレワーク環境を整備する。

 仮想デスクトップには、どこからでもデスクトップ環境にアクセスできるという利点のほかに、アプリケーションとデータを一元管理することで、セキュリティの向上や業務データの保全、クライアントPCの管理負荷の削減が図れるというメリットがある。

 シンクライアント端末には、「LIFEBOOK U937/P」を採用。同機種は重量約799gで持ち運びが苦にならないノートPCだ。

 また、グローバルコミュニケーション基盤は、メール、ポータルサイト、文書管理、Web会議、通話、SNS、ビデオチャットなどのコミュニケーションサービスを提供するシステムであり、富士通では2010年度の導入から、整備拡大を進めてきた。

 こうして見ると、富士通はWindowsデスクトップを中心に据えて、リソースをサーバーサイドに集約するタイプのソリューションを選択したと言えるだろう。この方式は、システムをシンプルにすることが可能であり、マルチOS・マルチデバイス対応といった工数のかかる工程を最小限に抑えることができ、運用管理の負荷も削減しやすい。利用する社員にとっても、既存のPCスキルがそのまま使えるといったメリットがある。

正式導入までのプロセスと運用ルール

 今回、テレワーク勤務制度を導入する富士通だが、これまでも働き方改革に向けて様々な取り組みを実施してきた。

 まず、2010年度からは育児・介護と仕事の両立を支援するために、在宅勤務制度を導入。2015年度には、早朝勤務などにも対応できるように、フレックスタイム制を改定。さらに、2016年度には、育児や介護あるいは自身のキャリアアップのために退職した元社員に対する再雇用制度を導入した。

 今回のテレワーク勤務制度も、関連部署を中心にしたトライアルを2015年度から実施し、課題の洗い出しや対策の検討を進めてきた。今回の正式導入は、そうした取り組みの積み重ねの上に成り立っている。同社は、トライアル期間に蓄積した知見を元に、実施当初は以下のようなルールでテレワーク勤務制度の運用を進めていくという。

  • 利用回数は制限なし。ただし、終日テレワークの場合は週に2回まで。
  • 利用時は上司に事前申請、始業時/終業時の業務予定・実績報告を義務化。
  • 休日や深夜時間帯のテレワークを原則禁止。終日テレワークの場合は8時間以内。

ICTを活用して労働実態を把握し、隠れ残業を防止

 上記のようなルールは、在宅勤務制度などを設けている企業なら策定しているのは当然のことだが、残念なことにルールが形骸化して、実態が伴わなくなってしまうケースも多い。テレワーク環境を整備してどこからでも仕事ができるようになると、オンとオフの切り分けがなくなり、むしろ労働の長時間化が進んでしまうおそれもある。その点について、富士通ではルールを実効性のあるものにするための対応策を用意している。

 まず、テレワークの趣旨を社員に周知徹底するために、全社員を対象に事前説明会を実施したほか、テレワークの「べからず集」などを盛り込んだe-Learning教材を制作。このほか、管理職向けの研修を実施する。

 また、勤務状況の把握や社員の時間管理意識の向上に対しては、ICTを活用して対応する。具体的には、富士通エフサスが開発した「FUJITSU Software IDリンク・マネージャーII」を利用した残業申請システムを導入し、上司が把握していない状況での労働が発生しないようにする。「FUJITSU Software IDリンク・マネージャーII」は、PCログを利用した勤務時間把握にも活用する。

 また、PCやスマートフォンを利用してどこからでも打刻できる出退勤管理システムを2017年1月に導入しており、この出退勤管理システムの労働時間とPCログから計算された労働時間に乖離が見られた場合は、管理職にアラートを送るシステムの導入も検討しているという。

 なお、富士通では、汐留本社を皮切りに各事業所にテレワーク勤務制度利用者に開放するワークスペース「F3rd」(第3のワークスペース)を整備する。また、外部施設を活用したワークスペースの提供も検討しているという。

働き方改革を継続的に発展させるために

 ここまで富士通のテレワーク勤務制度の内容と支援施策を紹介してきたが、その内容は実施当初のものであり、運用ルールやICT技術の活用方法については、定期的な見直しが必要になる。

2017年2月28日に開催されたプレス発表会では、執行役員 人事本部長の林博司氏が働き方改革の詳細を説明した

 そこで、富士通では経営トップレベルに「働き方改革推進委員会」を設置し、また働き方改革に関する社長メッセージを発信していくことで、トップダウンで働き方改革を推進していくという。さらに、部門や本部ごとの特性に合わせた働き方改革を実現するために、部門長や本部長が主導して実行計画を策定、コーポレート部門が各部の要請に対応して制度の見直しやICTツールの導入といった支援を行う体制を構築する。

 働き方改革では、とかくICTツールに注目が集まりがちだが、むしろ大変なのは、社員の意識改革や制度・ルールの作り込み、有効利用を促進するための副次的な施策など、ICTツール以外の部分にあると言ってもよい。しかも、デジタル技術の進化は、今後も働き方を変えていくことは間違いないため、企業における働き方改革は、終わりのない戦いになることは必至だ。約2年間のトライアル期間を設けて準備を進めてきた富士通の取り組みは、多くの企業にとって大いに参考になるだろう。

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