[ザ・プロジェクト]

RPAとOCRで不動産ローン申込書の省力化/顧客サービス向上を実現―アルヒ

2017年7月10日(月)杉田 悟(IT Leaders編集部)

RPA(Robotics Process Automation)が、かつてない勢いでITマーケットを席巻している。多くの場合、社内業務の効率化が導入目的となっているが、顧客サービスの向上にRPAを活用する動きも出てきている。ここに紹介する住宅ローンの専門金融機関であるアルヒも、2017年1月に開始したRPAを使って顧客の手間を省くサービスが好評のようだ。

 アルヒは、住宅ローンの専門金融機関。2015年までSBIモーゲージとしてSBIグループに所属していたが独立し、2015年5月に現社名に変更している。同社の現在の社長は、通販戦略で一躍国内パソコン市場のトップに躍り出た頃のデル日本法人で社長を務めていた浜田宏氏。ITの専門家のノウハウで、金融機関であるアルヒを大きく変えていこうとしているのだという。

 そのアルヒの主力製品が、固定金利住宅ローンの「フラット35」。販売実績は国内トップクラスで、以前はフラット35オンリーのビジネスモデルだった。変革を打ち出した2015年からは、ソニー銀行や住信SBIネット銀行との提携で変動金利商品も銀行代理業として取り扱うようになった。併せて、家探しの検索サービスも開始している。現在の家賃や希望通勤時間、年齢など簡単な質問に答えるだけで物件を紹介、同時に住宅ローンの支払いの目安も掲載し、ローン顧客への流入を狙う。

 それだけでなく、住宅ローンを借りた顧客に対して、例えばフラット35であれば最長35年間に渡り、接点を持つことになることから、アルヒでは60社あまりと提携して様々なサービスを割引料金で利用できるようにした。引越サービスから家具屋、外食、ネットスーパー、布団屋、学習塾まで、うまく使えば年間10万円ほどの節約になるという。

手続きの簡素化にRPAを活用

 このように顧客サービス向上に励むには理由がある。というのも、フラット35は数百の金融機関が取り扱っており、商品そのもので差別化を図ることが難しいからだ。周辺サービスを充実させることで、自社のフラット35を選択してもらおうという算段である。その一環として取り入れられたのが、RPAによる手続きの簡素化だ。

 大体において、申込書の書き入れは面倒なものだ。A4~A3の用紙にびっしりと小さな記入欄が並んでおり、ひとつひとつ手書きで埋めていかなければならない。フラット35を始めとする不動産ローン関係の申込書の記入項目の多さは、保険やカードの申込書の比ではないという。

 しかも、住所や給料の欄に記入された内容を証明するために戸籍抄本や源泉徴収票といった書類も別途必要となる。わざわざ取り寄せた書類の内容を、更に申込書に書き写していかなければならないのだ。フラット35の申込書の記入必要項目数は200ほど(写真1)。住宅ローンを組むのは、大抵の人が一生に1回なので、見慣れない書類に聞き慣れない単語もならんでいる。これに初めて書き込むのだから大変だ。

(写真1)旧フラット35申込書
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 A4見開きの書類を全部埋めるのに要する時間は、平均して1時間ほどだという。やっと書き終わったと思っても、提出後に間違いが発見されて手戻しが発生することも多い。分からないところは空欄のまま出す人もいるので、審査する側も手戻しが発生することを覚悟しておく必要がある。ローンの申込者にとっても、複数の申込書を受け取る不動産会社にとっても、審査会社にとっても、ストレスのたまる案件といえる。

(写真2)オペレーション本部 システム部長 西田哲氏

 アルヒが、この200もある記入項目を自動化により何とか減らせないものかと考えていたのが、2016年の夏のこと。投資アドバイザーにAI(人工知能)が用いられるなど、投資の世界ではAIが注目されていたころだ。同じ時期、徐々に話題になっていたのがRPAだった。「RPAを使えば記入の自動化が図れそう」と考え、いくつかのRPAサービスを比較検討した。オペレーション本部システム部長の西田哲氏は「RPAテクノロジーズが当時唯一、国内での豊富な導入実績を持っていたのでお願いすることにした」という。

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