[イベントレポート]
デジタル変革期の中で見えてきた、日本のデータセンター/クラウドの課題と勝機
2017年9月27日(水)狐塚 淳(クリエイターズギルド)
「自然外気冷却」「DC併設型太陽光発電」「IoT」「マシンラーニング/高火力コンピューティング」……2011年にフラッグシップとなる石狩データセンターの開設でクラウドシフトに舵を切ってから、業界に先駆けたチャレンジを加速させているさくらインターネット。クラウド&データセンターコンファレンス2016-17(主催:インプレス)のクロージング基調講演には、同社創業社長でこの業界きっての論客としても知られる田中邦裕氏が登壇。海外メガクラウド勢に対する差別化ポイントも含め、日本の事業者にとっての「課題」と「勝機」を詳らかにした。
DCビジネスの5年後は予測不可能、柔軟な計画変更が重要
こうした状況の中、さくらインターネットは2011年、石狩データセンター(北海道石狩市)を開所。専用サーバーを提供するために、土地が安く電気代も低廉な地域を探した結果石狩が選ばれたのだが、開設したその年が専用サーバー販売のピークで、その後の販売は伸び悩むことになる。
「クラウドをやるなら何千ラックも必要なく、別に東京でもよかったわけです。仕方がないので電気代の安さをセールスポイントにして、この先マシンラーニングやAIの基盤になることを見込んでGPUサーバーを売ろうと考えました。5年ほど続けていたら、ご存じAIブームが到来しそこから急に売れるようになりました」(田中氏)
石狩データセンターの建物は上から見るとT字型になっている。当初の計画では8棟を並列で建てる予定だったが、クラウドはスーパーコンピュータのようにサーバー間の接続が重要視されるため、ラックを光ファイバーの近くに置けて、保守要員がすぐにアクセスできるようにT字構造に変更したという。
「ここで言いたいのは、データセンタービジネスの5年後なんて何もわからないということです。しかし一方で、この分野に投資する際には常に新しいトレンドを取り込んでいく必要があります。トレンドに沿って最もふさわしい設計に変えていくことがカギになります」と田中氏。状況に応じた計画変更のために、投資単位を極力小さくしながら、その中で最適を目指していくことが重要だとした。柔軟な設計変更が奏功し、同データセンターは1年5カ月で黒字転換に成功している(図2)。
図2:石狩データセンターの売上・利益推移。開所から1年5カ月で黒字化し、以降、売上げ・利益とも順調に伸びている(出典:さくらインターネット)拡大画像表示
日本のクラウド事業者にもチャンスがある
外資系クラウドベンダー/事業者が台頭し、ますます勢力を強めている現在の状況を、田中氏はどうとらえているのか。「外資のクラウドが伸びているということは、日本の事業者にもチャンスがあるということです」と、田中氏は逆説的な意見を述べ、主要クラウドのシェアをスライドに示した(図3)。
図3:国内ホスティングサービス/IaaS・PaaS市場シェアとポジショニング(出典:GLOCOMクラウドビジネス研究会「2016年度クラウドビジネス研究会定量調査結果 速報版」/さくらインターネット)拡大画像表示
国内のクラウド市場はAWSのシェアが26.3%で、Microsoft Azureが20.5%で続き、トップ2社合計で実に46%に達する。国内勢では富士通が12.4%で、さくらインターネットは10.3%となっている。田中氏は聴講するデータセンター事業者に向かって、次のように呼びかけた。
「2強のシェアを切り崩すのは国内プレーヤーには非常に困難なことです。そこで見方を変えて、今のシェア10%を維持し続けることに注力する。レンタルサーバーと異なり、クラウドは市場全体が今後も伸びていくので、残ることができさえすれば利益をもっと高めていけるはずです」
さくらインターネット / データセンター / IoT / AI
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