現在、ITマーケットで最も勢いのあるトピックの1つであるRPA(Robotic Process Management)だが、導入形態は進化している。単にRPAツールを導入するだけでなく、OCRやチャットボットとの連携、ERPとの連携など他システムとの連携により、自動化を促進する試みが注目されている。2017年11月30日に大阪で開催されたRPA SUMMIT 2017 IN OSAKAでは、繊維素材商社である帝人フロンティアから、RPAとOCR、RPAとERPの連携事例が紹介された。
RPA SUMMIT 2017 IN OSAKAは、2017年7月27日に東京で開催されたイベントの大阪版となるもので、レノボ・ジャパンの社長にしてNECパーソナルコンピュータの社長も兼務する留目真伸氏が基調講演を行った。次のセッションに登壇したのが、アビームコンサルティング執行役員の安部慶喜氏だった。
安部氏はまず、RPA関連の最新の調査結果から、RPAの最新動向を解説した。調査は2017年7月から9月にかけて、日本RPA協会、RPAテクノロジーズ、アビームコンサルティングへの問い合わせおよび導入実績を分析したものだ。
RPAの導入企業といえば、真っ先に思い浮かぶのが金融機関だが、今回の調査では、問い合わせがもっとも多かったのがメーカーだった。2017年1月から6月調査の時点ですでにメーカーが61%を占めていたが、7月から9月の調査では更に微増して63%だった。金融機関はわずか7%に止まっており、すでに多くの金融機関が問い合わせの時期を過ぎたという考えかたもできるが、メーカーの関心の高さが突出しているのは間違いないようだ。
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メーカー以外で注目されるのが、商社・小売の伸びだ。1月から6月分の調査では「その他」の中の1業種に過ぎなかったのが、7月から9月分ではサービス業と同じ12%で同率3位と急成長を遂げている。
業務の集約化だけでなく効率化を目標に
セッションの途中で安部氏が壇上に呼び込んだのが、その商社である帝人フロンティアで財務・経理を統括する財経本部 財経本部長の池田正宏氏だった。帝人フロンティアは、大阪市に本社を置く帝人の商社子会社だ。同社は、帝人の子会社である帝人商事と日商岩井(現双日)の繊維部門を統合して2012年に設立された、繊維の研究開発から製造、販売までを行う繊維商社。連結子会社は国内14社、海外12社、従業員数は881名を数える。
当時、帝人フロンティアは業務改革の一環としてBPR(BusinessnProcess Re-engineering)に取り組んでおり、業務改革を支援していたアビームコンサルティングから提案されたのが、RPAだった。時を同じくして、奇しくも経理部の若手社員が自発的にRPAに興味を持ち、検討していたという。
社全体で取り組んでいた業務改革、営業部門では営業事務の一部をバックオフィスに集約化することで効率化を目指すという取組みを行っていた。経理部の若手社員の間では、どうせやるなら集約化するだけでなく、業務の標準化を図り、そのうえで効率化したいという意見が持ち上がっていた。そんな時期に話題になっていたのがRPAで、「これは使えるのでは」と考えたのだという。集約したものを人間ではなくソフトウェアロボットにやらせることで大幅に効率化できるところに注目した。
池田氏自身は「初めてRPAを聞いた時、それがどういうもので、どのように使われるかというイメージすら持っていない状態だった」が、一般職、総合職の社員が参加してRPAのデモを敢行、将来どんな業務に展開できそうかとブレーンストーミングした結果、「かなり使えるのでは」と手ごたえを感じたという。
投資額は大きくないので、一度チャレンジしてみることに決めた。投資額は、池田氏の権限で決済できるレベルのものであったが、財経部門での導入に終わらせないため、あえて経営会議でマネジメント層に説明、全社プロジェクト的な扱いにして進めた。
新たなプロジェクトの導入には、リスク想定が必要となるが、「何しろまったく初めての経験だけに白紙の状態で、リスク想定もできなかった」という。あれこれ考えたが結局重大なリスクは浮かばず、「こんなところに使える、あんなところにも使えるといった前向きな話に終始したことが、かえってよかったのかもしれない」と振り返る。
RPA導入プロジェクトを開始したのはわずか5カ月前の2017年6月。まずは会社の組織図には載っていない「RPA分科会」という非公式のチームを立ち上げ、ソフトウェアロボット開発の専任チームとした。当初の構成員は池田氏を除いて6名、うち4名が池田氏の直属の部下で1名は人事部、1名はシステム部からのメンバーだった。現在は8名体制で運用している。
将来的な内製化は目指していたが、プロジェクト達成のためには小さな成功を着実に積み上げていくことが重要と考えていたので、まずはアビームにロボット作成を依頼、次にアビームのサポートを受けてチームメンバーが開発、馴れてきたら内製化という工程を踏むことにした。
専門チームは平均年齢30歳前後の若いチームで、「マニュアルを見せてといってくることはまずなく、取りあえず触ってみるのが彼ら流のやり方。覚えるのが実に早い」とスマホ世代の若い力に感心していた。最初の6、7個のロボットはアビームに依頼していたが、5カ月たった現在は、「完全に内製化している」という。
ロボット開発は、まずは財務経理関係の業務から導入しやすいと踏んだ財務の入金管理業務、経理の決算関係業務への適用から始めた。相手方に迷惑をかける可能性のある、外部との金銭のやりとりに係る業務は後回しにし、社内の管理上の仕組で完結するものでのスタートとなった。
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