[イベントレポート]
「我々は互いに補完的なパートナー」―Kubernetesを媒にグーグルとのマルチクラウド連携を強めるシスコの狙い
2018年7月23日(月)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)
2018年6月11日~14日に開催された「Cisco Live 2018」で、シスコシステムズはグーグルとのパートナーシップ強化をアナウンスした。2017年から段階的に強化してきたマルチクラウドにおける両社の連携は、今後のクラウド市場でのシスコの方向性を指し示すものととらえられる。本稿では現地での取材を元に、グーグルとのパートナーシップを強化するシスコの戦略とその背景について検証してみたい。
米フロリダ州オーランドで開催された米シスコシステムズ(Cisco Systems)の年次コンファレンス「Cisco Live 2018」。昨年発表のインテントベースネットワーク/The Network. Intuitive.(関連記事:Cisco Live US 2017現地レポート)のようなグランドビジョンの発表はなかったが、米グーグルとのパートナーシップ強化(写真1)、新たなフラグシップ製品群「Cisco DNA(Digital Network Architecture)」のアップデート、開発者向けポータルのCisco DevNetの拡張など、この1年をかけてシスコが注力してきたビジネスの現状と今後の戦略にかかわる内容が目立った。
Kubernetesをコアにした協業が進む
シスコとグーグルは2017年10月、マルチクラウドにおける提携を発表し、今後、オンプレミスとパブリッククラウドのGoogle Cloudをセキュアに接続するソリューションを両社で協力して提供する方針を明らかにした。具体的な内容は以下のとおりだ。
●Kubernetesベースのコンテナオーケストレーションをハイブリッドクラウドで提供し、柔軟でセキュアなアプリケーションデプロイやリソースマネジメントを実現
●ネットワークポリシーやセキュリティポリシー、アプリケーションモニタリングなどをマルチクラウド環境に拡張
●マルチクラウド環境におけるリアルタイムネットワークの可視化やアプリケーションパフォーマンスのモニタリング/自動化を強化
●シスコのハイパーコンバージドインフラ製品「Cisco HyperFlex」における既存アプリケーションおよびKubernetes管理下のクラウドネイティブアプリケーションのサポート
●オープンソースのマイクロサービスマネジメントツール「Istio」を介し、オンプレミスとGoogle Cloud間のコンテナ/マイクロサービスを統合管理
●グーグルが買収で得たAPIマネジメントプラットフォーム「Apigee」をオンプレミス側に実装し、APIを介してレガシーワークロードをクラウド上で稼働
●シスコのDevNet上でハイブリッドクラウドにフォーカスしたコンテンツを提供
●これらのソリューションのテクニカルサポートを両社が共同で提供
この提携に基づき、シスコは2018年に入ってから自社製品のGoogle Cloud向けサポート、特にKubernetesをコアにしたソリューションを次々と発表している。2018年1月には商用Kubernetesサポートの「Cisco Container Platform」、3月にはセキュリティソリューション「Cisco Stealthwatch Cloud」のGoogle Cloud向けサポート、5月には「AppDynamics」「Cisco CloudCenter」のKubernetesサポートを開始しており、オンプレミス/パブリッククラウドを問わずに、アプリケーションをハイブリッドにデプロイできるKubernetes環境の提供に注力していることがうかがえる(写真2)。
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今回のCisco Liveに併せ、シスコは開発者向けポータルのDevNetに新しいオンラインリソース「Cisco and Google Cloud Developer Center」を追加すると発表、KubernetesやIstioといったグーグルが開発のリーダーシップを握るオープンソースプロダクトについて学べるコンテンツを2018年後半から提供するとしている。
シスコのエンジニアだけでなく、パートナー企業を含む外部の開発者も受講が可能となっており、エコシステム全体でKubernetesを核としたオープンソース技術をサポートしていく姿勢を見せている(写真3)。
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