[市場動向]

2019年1月21日(月)IT Leaders編集部

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　画像など大容量データの高速処理ニーズの高まりやIoT化の加速を背景に、高い電力効率と処理性能を両立できる半導体チップとして、ユーザーが電子回路を書き換え可能なFPGAの採用が広がっている。

　FPGAは、電気信号を切り替えるためのトランジスタの素子サイズを微細化することで、チップに搭載する回路規模を大きくしている。微細化するほどトランジスタのリーク（漏れ）電流が増え、それによる消費電力の増加が課題となっていた。

　そこでNECは、NEDOのプロジェクトにおいて、信号切り替えに独自の金属原子移動型スイッチ「NanoBridge」を用いることで、省電力と小型化を実現したFPGAであるNB-FPGAを開発した（写真1）。

写真1：NanoBridge-FPGA（縦：28mm×横：28mm）

　NB-FPGAは、独自の動作原理「原子スイッチ」に基づくFPGAである。書き換え可能でありながら、回路構成情報を保存するメモリーが不要なため、放射線の影響で回路構成情報が書き換わってしまうソフトエラーの発生確率が小さく、信頼性に優れるという。また、現在のFPGAと比較して消費電力を10分の1、チップサイズを3分の1に抑えられる。

　これらの特徴を生かして今回、JAXAが2019年1月18日にイプシロンロケット4号機で打ち上げた衛星技術実証1号機の中の小型衛星「小型実証衛星1号機（RAPIS-1）」に、NB-FPGAを搭載した（写真2）。JAXAとNECが共同で、放射線が非常に強い宇宙空間での動作・信頼性に関する実証実験を行う。

写真2：小型実証衛星1号機（RAPIS-1）
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　NECは、同実証結果を基にNB-FPGAの事業化を推進し、人工衛星機器のほか、自動車や医療分野への展開を進めるとしている。また、IoT機器の高度化と省エネルギー化も図る考えだ。

　具体的な実証内容としては、JAXAが開発したカメラモジュールにNB-FPGAを実装し、RAPIS-1に搭載した。ソフトエラーの評価回路を一定期間動作させ、正常な動作完了を知らせる信号が評価期間中に継続出力されることを確認する。また、衛星の太陽電池パネルの開閉前後の画像と衛星から地球を撮影した画像を、NB-FPGAに書き込まれた画像圧縮回路で圧縮し、その圧縮データが地上へ正常に送信されることを確認する。実証は打上後、1年間の中で行う。