自社のITを統括する役員が、その職責を担って複数の業界にまたがって転職を重ねて活躍し続ける──欧米で定着している“職業CIO”が、日本ではなかなか根づかないのはなぜか。何が足りていないのか。
雇用の流動化はCIO人材にも及ぶ
日本の雇用の流動化には大きな2つの要素があるようだ。1つは日本の伝統的な経営文化であり雇用の慣例でもあった終身雇用、年功序列の崩壊である。この制度は経済が右肩上がりで成長をしていた時代にはきわめて有効であり、労使の共存共栄と集団思考という日本的な文化の中で合理性を持って迎えられてきた。
しかし、バブル経済崩壊とその後の金融危機によって経済成長が鈍ってしまい、企業は年功制賃金による人件費の増加に耐えられなくなった。
とはいっても、日本では雇用調整が自由にできない。早期優遇退職制度や配置転換、出向や自主的な退職を促す、いわゆる窓際族によって余剰人材を減らしていく傍で、正社員雇用から非正規雇用へシフトさせて雇用調整の自由度を高めるなど、企業内部から人事制度崩壊が進んだ。終身雇用や年功序列の崩壊は、雇用の流動化と能力主義へのシフトを促し転職も増えていった。そして転職がディスアドバンテージという印象もなくなっていく。
もう1つの要素は、企業に対するロイヤリティや労働に対する価値観の変化だ。寄らば大樹の大企業に雇用の安定性がなくなる一方で、非正規雇用労働者が増えていき、企業帰属意識が薄れていく。非正規雇用比率はこの20年間で2倍近くに増えている。労働に対する価値も滅私奉公とかではなく、自己実現や私生活重視に変化している。
加えて、働き方改革の政策誘導によって兼業や副業など多様な労働形態も出てきた。雇用の流動化はITリーダーやCIO人材にも及び、転職組が増えつつある。こうした動きは、日本に“職業CIO”を創出していくことにつながるのだろうか。
CIOだけではどうにもならない現実がある
CIOという職務を持った役員が業界をまたいで転職し、その職責を担って活動する人々を筆者は職業CIOと呼んでいる。日本の大手企業で初めて職業CIOが登場したのが4年ほど前でまだ黎明期と言える。だが、その後登場がいくつか続いて、いよいよこの国にもそのキャリアが存分に生かされる職業CIOの時代が来るかもしれないとの期待で去就に注目してきた。
●次ページ:職業CIOが活躍できる組織・環境とは?
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