レッドハット日本法人は2019年4月24日、説明会を開き、同社の2019年度(2018年3月~2019年2月)の実績や2020年度の事業方針、ユーザー事例、富士通やNECといったパートナーとの協業について説明した。富士通は2019年7月からOpenShiftのマネージドサービスを提供するほか、同社ミドルウェアをコンテナ化して提供する。NECはユーザー企業に導入したシステムの運用をAnsibleで自動化し、これをサポートする。
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レッドハットは同社の2019年会計年度(2018年3月~2019年2月)で、クラウド基盤の「OpenStack Platform」、コンテナ運用基盤の「OpenShift Container Platform」、構成管理自動化ツールの「Ansible Automation」の3つに注力し、ユーザーの利用を促進してきた。
2019年度の実績は堅調だったとしている。OpenStackはクラウド基盤として採用が進み、業績は2018年度比で2.3倍になった。OpenShiftはパートナー企業によるマネージドサービスの提供が進み、2018年度比で3.2倍になった。Ansibleは2018年度比で3.4倍になった。
「ユーザーの需要は、複数のクラウドを使うことと、コンテナを使うこと」。レッドハット 代表取締役社長の望月弘一氏(写真1)は市場の状況をこう説明する。米Red Hatが実施した調査では、今後2年以内に74%のユーザーがコンテナを使い始め、28%のユーザーはコンテナの適用率が50%以上になる。
「コンテナ市場は始まったばかり」と望月氏は述べ、コンテナ市場は2017年から2022年にかけて10倍以上に増えるという市場調査の結果を示した。この期間のCAGR(年平均成長率)は63.9%となる。望月氏は背景に、アプリケーションをすばやくデリバリー(リリース)する需要の高まりを挙げる。「かつてのアプリケーションは年単位のリリースだったが、これが月単位や週単位、日単位のリリースへと早まる」(望月氏)。
こうした市場の変化を受けて、レッドハットが2020年度に注力する分野として、クラウドネイティブアプリケーションを高速に開発するための環境を提供することを挙げる。Javaアプリケーションサーバーなどの各種ミドルウェア、コンテナ基盤のOpenShift、コンテナ環境向けの統合開発環境「CodeReady Workspaces」などによって、アプリケーションを高速に開発できるように支援するとしている。
富士通がOpenShiftのマネージドサービスを開始、NECはAnsibleをサポート
また、レッドハットは2020年度にパートナーとの協業もより進めていくことを挙げる(写真2)。
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富士通は、コンテナアプリケーション開発・運用基盤のOpenShiftをマネージドサービス化して2019年7月から提供する。富士通が注力するポイントは、高信頼性と高可用性である。すべてのコンポーネントを冗長化するほか、明石と舘林の東西のデータセンターによって冗長構成をとり、ユーザーの拠点とは専用線で接続する。
富士通は、また主要ミドルウェアをコンテナ化して提供し、OpenShift環境で利用できるようにする。アプリケーション開発・実行環境のInterstage、運用管理ソフトのSystemwalker、データベースサーバーソフトウェアのSymfowareの3つをコンテナ化し、2019年第1四半期から順次提供を開始する。
NECは、構成管理ツールのAnsibleのサポートサービスを開始する。同社は社内のSI事業(システム開発事業)にもAnsibleを利用しているが、ユーザー企業で稼働を開始した後のシステム運用を自動化する用途にもAnsibleを適用し、これをサポートする。これに合わせ、Ansibleと組み合わせるかたちで、システムの設定値を一元管理する「astroll IT Automation」をオープンソース化して公開した。
レッドハットは説明会の後半、いくつかのユーザー事例を紹介した。TOKAIホールディングスは、OpenShift Dedicatedのユーザーである。分散していたWebアプリケーションをコンテナ化して集約・統合した。オリンパスは、OpenShift Container Platformのユーザーである。GPUを用いたディープラーニング基盤をコンテナ化している。ソフトバンクは、Ansible Towerのユーザーである。負荷分散装置のSSLサーバー証明書の更新作業を自動化している。