[木内里美の是正勧告]

今なお時代遅れの通信環境、日本の5Gは本当に大丈夫か?

2019年5月22日(水)木内 里美(オラン 代表取締役社長)

5Gがようやく到来する。今夏には国内キャリア各社によるプレサービスが始まり、2020年に本サービスが提供開始というスケジュールだ。しかし、5G時代を目前にしながら、我々の周りの通信や無線LAN環境にさほど進展が見られない。

 スマートフォンが普及の途についたのは、おおよそ10年前。それに比べると無線LANの歴史は意外にも古く、ALOHAnetの研究開発で知られる米ハワイ大学が、1970年にハワイ諸島間を結んだ無線ネットワークが最初の実装とされる。長らく高価で遅く、しかもメーカーが異なると接続できない状況が続いた。

 状況が変わったのは、20年前の1998年に米国電気電子学会(IEEE)が規格を統一し(IEEE 802.11)、つまりWi-Fiを策定してからだ。無線LANがWi-Fi規格になったことは画期的であり、その普及に貢献したのが米アップルのコンシューマー向け無線LAN機器「AirMac」(海外での製品名は「AirPort」)であったことは、iPhoneの普及以上に興味深い。

 そんな技術革新を経て、今では世界中どこに行ってもWi-Fiが使えるようになった。カンボジアでもミャンマーでもラオスでも、空港に降りた途端にフリーWi-Fiが使えてインターネットに容易にアクセスできる。ホテルやレストランに入れば、セキュアなWi-FiのSSIDとパスコードが提供される。Wi-Fiを通じていつでもどこからでもインターネットを使えることが当たり前になってきた。

 さて日本はどうだろう? 成田や羽田など主要な空港ではさすがにフリーWi-Fiが使えるが、地方の空港ではまだサービスがないか、あっても試験運用のところが多い。新幹線でも使えはするが、メールアドレスかSNSアカウントの登録が必要で簡便性に劣る。宿泊施設はWi-Fiを提供するところがかなり増えたが、飲食施設は一部のチェーンを除いてまだまだ少ない。店舗で使っているのだから客にも開放してくれればよいのにと思うが、実際、あまりない。かくして日本の街はインターネットにアクセスしにくく、スマホがつかむ4G回線に頼るか、モバイルルーターを持ち歩くことになる。

家庭用光ファイバー回線も低速度

 国家戦略として、日本政府が高度情報通信社会に対応する「e-Japan戦略」を策定したのが2001年のこと。この中で重点方針として掲げたのが以下の5点だった。

(1)高速・超高速インターネットの普及の推進
 ・世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成

 ・高度情報通信ネットワークの安全性および信頼性の確保
(2)教育(機関)の情報化・人材育成の強化
 ・教育および学習の振興ならびに人材の育成
(3)ネットワークコンテンツの充実
(4)電子政府・電子自治体の着実な推進
(5)国際的な取り組みの強化

 (1)の高速インターネットに向けて、光回線サービスであるFTTH(Fiber to the Home)の本格的な商用ビジネス展開が始まったのも2001年だった。当時は電話回線を使ったADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line:非対称デジタル加入者線)が主流だったが、18年が経過する間に、固定ネットワークの基盤はADSLから光回線へと移った。現在では個別家屋でもマンションでも事務所でも光回線が当たり前であり、理論値で毎秒10億ビット(Gbps)以上の情報を伝送できるギガサービスという商用サービスがある。

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