[オピニオン from CIO賢人倶楽部]

企業における組織の課題とITの果たすべき役割

ヤンマー 執行役員 ビジネスシステム部 部長 矢島孝應氏

2019年6月17日(月)CIO賢人倶楽部

「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システムの取り組みの重要性に鑑みて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見を共有し相互に支援しているコミュニティです。IT Leadersは、その趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加しています。同倶楽部のメンバーによるリレーコラムの転載許可をいただきました。順次、ご紹介していきます。今回は、ヤンマー 執行役員 ビジネスシステム部 部長 矢島孝應氏のオピニオンです。

 今日、大企業と呼ばれる組織も、始まりは1人か数名だったことは間違いありません。その頃は個人の意思決定がすべてを決めます。創業者が自分だけで、あるいは少数のパートナーと自然に整合性を取りながら目標に向けて活動する。それが正しければ成功を積み重ねることができ、事業は拡大していきます。当然、事業の拡大に伴って人が増え、組織も大きくなります。まず、そこで起きる問題を考えてみましょう。

何もしなければ大きな組織は「大企業病」にかかる

 結論から言えば、そうした成長の過程で発生するのが次のような課題です。

①コミュニケーション・プロブレム
②個別取組強化≠全体最適
③成功体験への固執
④最後に大企業病

 順に見てみましょう。①のコミュニケーション・プロブレムとは一般に、違う国の言語を使う者同士でコミュニケーションが取れない時に使われる言葉です。しかし同じ言語を使っていても、コミュニケーション・プロブレムは起こります。人が増えると相手に伝わらない、誤解する確率が増加するプロブレムが生じるのです。例えば2人の時のコミュニケーション・ライン(伝達路)は1本です。3人は3本ですが、4人になると6本、10人では45本、20人は190本と級数的に増加します。

 伝言ゲームと同じく、人数が増えると正確にコミュニケーションする困難さがそれだけ増えるわけです。そこで誤解を減らすために、できるかぎり明確に物事や指示内容を示すようになります。実はそれがまた新たなプロブレムを生むことにもなります。

 例を挙げます。関西弁で「あんじょうしてや」と言う言葉があります。標準語では「あなたの判断でうまく、具合よく行って下さい」といった意味です。決まりやルールはあるのですが、状況の変化やお客様の反応により臨機応変に各人が対応し、最適に調整し、以心伝心で連携する。だから「あんじょう」するわけです。大阪人はこの言葉を使い、適度な度合いで仕事を進めてきたケースが多々あります。個人や少人数の時は、この「あんじょうしてや」がうまく機能します。

 しかし人数が増えてくると、そうはいきません。「あんじょうしてや」は多分に曖昧なので、コミュニケーション・プロブレムを引き起こします。これを避けるために、できるかぎり明確に示すようになるわけです。「あんじょう」するのではなく、「こう決まっているから」「こう指示されたから」となり、組織として適時・的確なアジャストができなくなる可能性が高まります。

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