ITコンサルティング・調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)は2019年8月8日、国内の従業員エンゲージメント市場規模推移および予測を発表した。従業員の貢献意欲を計測し改善案を提案する同市場が国内でも立ち上がり、2022年度には120億円に達する見込みという。
従業員エンゲージメント(Employee Management)は、近年、欧米企業を中心に広がりを見せているテーマである。ITRは日本国内における同テーマの状況を次のように説明している。「国内では従来の年功序列・終身雇用制度の維持が難しくなっており、離職率の上昇と人材不足が深刻化している。このため、人材確保を経営の最重要課題の1つにあげる企業が増加しており、企業経営の安定化に向けた人事施策の一環として従業員エンゲージメントが注目度を増してきている」
ITRは、国内の従業員エンゲージメントにまつわる製品やサービスの市場規模を測るにあたり、対象を「従業員の貢献意欲の度合いを多様な角度から計測するアンケートと集計・分析機能、および改善すべき項目の提示機能を有する製品・サービス」としている。
同社によると、国内従業員エンゲージメント市場の2017年度の売上金額は8億円に成長し、市場が立ち上がり、2018年度は約3倍の23億円に拡大する見込みという。同社は、この分野の製品・サービスへのニーズが浸透し、成長がさらに加速すると見て、従業員エンゲージメント市場のCAGR(2017~2022年度)は71.9%、2022年度には市場規模は120億円に達すると予測している。
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ITR 取締役/シニア・アナリストの舘野真人氏は次のようにコメントしている。「人材不足が叫ばれるなか、金銭やポスト、モノといった地位財よりも、安全、信頼、健康などといった非地位財が、組織パフォーマンスや人材維持にはより有効であるとの考え方が浸透しつつある。また、非地位財を重視する企業がホワイト企業と呼ばれ評価される傾向も強くなっている。そうしたなかで、従業員の組織に対する貢献意欲やモチベーションの可視化と分析を支援する従業員エンゲージメント・ツールは、組織開発や職場環境の健全化を目指す経営層にとって魅力的なツールとして注目されている」
また舘野氏は、従業員エンゲージメント・ツールを導入・運用していること自体が、人材重視の経営姿勢を内外に示す手段にもなりつつあると指摘。今後、人材の流動性の激しい業種・業態を中心に導入・活用が大きく進むと見られるとしている。
今回の発表の詳細は、ITRが発行した市場調査レポート「ITR Market View:人事・人材管理市場2019」に掲載されている。同レポートには、人事管理、給与管理、人材管理、LMS、従業員エンゲージメントの全5分野を対象に、国内51ベンダーへの調査に基づいた2016~2017年度売上げ実績および2022年度までの売上げ予測を掲載している。