大日本印刷(DNP)は2019年12月26日、ICタグ(RFID)を用いた情報共有システムの実証実験で得られた成果を公開した。廃棄ロスなどの社会課題の解決と、生活者の利便性の向上に向けて成果があった。実証実験は、2019年2月12日から28日にかけて、経済産業省および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で実施した。
DNPは、ICタグを用いた情報共有システムの実証実験を実施した。ICタグを活用したデータ連携の推進やサプライチェーンの効率化、食品ロス・廃棄ロスの削減などの社会課題の解決を目指した。実験には、約60の企業・機関・大学が参加した。なお、実験の成果は、報告書の形で2019年10月末からNEDOのWebサイトで公開している。
店舗において、ICタグの活用によるダイナミックプライシング(動的な値付け)と、デジタルサイネージによる広告配信効果を検証した(図1)。実験協力先の5店舗で、ICタグを用いた情報共有システムと生活者のスマートフォンアプリを接続した。リアルタイムでの販売価格の調整や、広告配信による購買率の変化を検証した。
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実験(実験登録者数:4618人、性別割合:男性31%、女性19%、不明50%)では、リアル店舗で在庫品の消費・賞味期限の情報を取得し、期限が間近の食品の販売価格を下げるなどのダイナミックプライシングを実施した。結果、買い上げ率が上がるなど、「目的買い」をする生活者の傾向が確認できた。
また、来店者が商品を手に取った際に、店内サイネージで該当の商品に関する情報を配信し、対象商品・競合商品・上位商品を訴求した。対象商品・上位商品の訴求時には買い上げ率が増加したが、競合商品では効果が見られなかったとしている。
家庭で商品を使った/捨てたかどうかも調べた
実験ではまた、ICタグを貼り付けた商品が家庭に流通することを想定し、生活者モニターの協力を得て、冷蔵庫・洗面所・ごみ箱の3カ所で、該当商品を「使った」、「捨てた」という状況データを取得した。
商品の購入タイミングや使用期限切れ・ストック切れなどの情報を取得し、メーカーと共有することで、メーカーと生活者双方に有益なサービスが創出できる可能性が高いことを確認できた。
例えば、家庭での商品の使用時間帯や使用頻度のデータをICタグで取得することにより、メーカーの商品開発に活かすとともに、生活者が消費スタイルに合った商品情報を得ることが可能になる。
商品へのICタグ貼付に関するガイドラインを策定
コンビニエンスストアなどで取り扱われる代表的な17の商品について、ICタグの適切な取り付け位置の指針となる「個品(商品)への電子タグ貼付に関するガイドライン」を策定した。さらに、物流時の商品の梱包やカゴ車へのICタグの取り付け位置を示す「物流形態における電子タグ貼付に関するガイドライン」を策定した。国内の消費財におけるサプライチェーンの効率化を狙う。
さらに、サプライチェーン上の異なる拠点にある複数企業のデータを当事者間で共有するためのモデルも整備した。情報共有時のデータフォーマットやルールなどを検討し、実証実験の結果等を踏まえ、サプライチェーンにおける情報の共有のあり方の1つとして、「EPCISデータ連携ガイドライン」を策定した。