デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためにはデータ活用のためのプラットフォームが欠かせない。「データマネジメント2020」の日本電気(NEC)のセッションでは、デジタルプラットフォーム事業部の森山由紀氏が「価値創出を加速するNECデータ活用基盤」と題して、DXの課題やそれに対するNECの取り組みとして「NECデータ活用基盤」の事例を紹介した。
DXを阻害する「イノベーションのサイロ化」
NECは、社会価値創造に取り組む企業として、スマートシティによって都市生活をより豊かなものにする「NEC Safer Cities」と、人・モノ・プロセスを産業の枠を超えてつなぎあわせる「NEC Value Chain Innovation」という2つの成長事業に注力している。森山氏はまず「これら2つの事業を支え、牽引するのがデジタルプラットフォームのデータ基盤であり、NECが社会価値創造の原動力となるためにデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを加速させています」と説明した。
DXの取り組みは世界的に活発化しているが、日本においては阻害要因も多いという。例えば、「イノベーションのサイロ化」だ。組織の各所で行われているデジタルイノベーションを単一のプラットフォームに集約できていない。また、IDC Japanによる成熟度モデルなどを見ても、半数以上は「標準基盤化」にとどまり、「継続的革新」にまで至っていない。
こうした現状に対し森山氏は「業界の垣根がなくなってきているなかで多くの企業が自分たちの未来を描き切れていません。また、テクノロジーの専門家が不足し、育成/獲得の時間とコストも増大しています。レガシーシステムが限界を迎えつつあり、外部システム連携や運用コストが増加しています。DXの戦略策定からプラットフォームまでCIO/CDOをサポートしていくパートナーが必要です」と主張する。
ナレッジを「デジタルフレームワーク」として整備
日本企業がこれらの課題を解決し、DXを実現することを支援すべく、NECでは自社におけるDXの取り組みを加速させている。
「見える化、分析、対処という価値創造プロセスを回すことで、社会基盤を創造していくことを目指しています。NECには世界レベルのアセットがありますが、それらを活用しながら、実世界での情報を見える化し、サイバー空間でAIエンジンを使って分析し、その対処策を実世界に戻します。また、それらをセキュアなクラウド環境で高速なネットワーク基盤として提供できるようにしています」(森山氏)。
世界レベルのアセットとしては、生体認証、映像分析、AI、クラウド、ネットワーク、サイバーセキュリティなどがある。これらをモデルとして全社的に展開し、それぞれを融合してオファリングを高度化させている。また、DX専任の組織を設置し、全社横断でデジタルビジネスを推進している。
「これらはデジタルプラットフォームとして整備され、NECのお客様の環境においても活用、実践できるようになっています。デジタルプラットフォームは、ネットワークからアプリケーションまで1つのアーキテクチャに統合され、セキュアな環境として提供されます。また、NEC全社のナレッジやノウハウは『デジタルフレームワーク』として整備され、ビジネスやシステムのユースケースとして活用できるようになっています」(森山氏)。
「NECデータ活用基盤」が果たす役割
NECのデジタルプラットフォームのなかで、さまざまなアセットをつなぐ重要な役割を果たすのがデータだ。そこでNECではデータを活用するための基盤を「組織の枠を超えて多様なデータの収集・整理・加工・分析ロジックの実行を統合し、データから価値創出を加速するプラットフォームおよびサービス」と定義。この「NECデータ活用基盤」を活用して、DXの取り組みを加速させている。
「NECデータ活用基盤は、NECのデジタル化ソリューションの分析に必要なデータをいち早く、簡単に準備、提供する仕組みを提供するものです。具体的には、ハイブリット環境でのデータ活用、データ活用促進ツールの提供、利用用途特化型のデータモデルの提供です」(森山氏)。
NECデータ活用基盤を利用するメリットは3つあるという。1つめは、顧客データソースに最適な方法でデータをクラウドに移行し、その活用を促進できること。2つめは、オンプレやクラウドにあるデータを統合的に管理し、データ保管場所を意識せず、効率的に分析を実行できること。3つめは、課題を解決するリファレンスモデルをベースとした用途ごとに最適な分析基盤を利用できることだ。
「NECデータ活用基盤が目指しているのは、 既存/新規システムのデータと外部データをクラウドで統合管理し、DXを促進するユースケースをデータで活用し、お客様と新たな価値を共創していくことです」(森山氏)。
高い知見と深い知識で顧客のDXを牽引
森山氏は、実際にデータ活用基盤を活用して顧客の課題を解決してきた事例をユースケースとして紹介した。顧客が抱えがちな課題としては下記のようなものがある。
- データ活用が限定的な分析に留まっている
- レガシーシステムのデータ統合が進まない
- データ利活用の生産性が低い
これらに対し、NECではデータ活用プロセスを統合UIで支援するシステムを導入し、データ活用を業務に組み込むことで、各関係者が容易に連携しデジタル経営を実現できるようにする。これにより「組織を超えたデータ統合管理」「分析用途に適した標準データのタイムリーな提供」「ユーザーのデータ分析・活用の利便性の向上」などを実現できたとした。
最後に森山氏は「NECは企業変革に向けてデジタルのコンピテンシーを全社で確実に進化させています。ネットワークからアプリまで高い知見と深い知識でお客様のDXを牽引します。また、5Gを含むデジタルの新市場をリードしていきます。デジタルな環境を整備していくことで、人間らしいことがさらに広がっていくことを期待しています」と述べ、講演を締めくくった。
●お問い合わせ先
日本電気(NEC)
URL: https://jpn.nec.com/
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