コロナ禍でテレワークが当たり前になってWeb会議が日々頻繁に行われるようになった。改めて日本企業の会議好きを感じるのと同時に、非効率、もっと言えば無駄な会議がいかに多いかにも気づかされる。Web会議システムという、会議手段の変更を契機に、改善すべきところがたくさんあるのではないだろうか。
日本人は会議好きだと思う。筆者が会社勤めしていたときに、いつも感じていたのが会議の多さである。おそらく多くの人が、そう感じているのではないか。業界団体やコミュニティでの会議も多い。そして長い。ときには3時間のものもある。集中できるのは1時間くらいが限度だろうし、1時間もあれば会議の目的は達成できる。大人数を集めるから時間が長引くし、議論の密度も低くなる。とすると、会議好きという以上に集団行動や群れることが好きなのかもしれない。
会議好きの日本人、「とにかく多い」「とにかく長い」
群れの心理については改めて考察したいが、群れたがる習性と会議好きは無関係とは思えない。それは会議の目的を見るとわかる。本来、意見交換や合意というプロセスを踏んで、意思決定するのが会議の目的だ。しかし中には、意思決定を先延ばしするための無駄な会議や、報告や連絡だけの定例会議と称するような会議もある。議題を特に設定せず、集まることが目的化している会議もある。こういう会議ほどダラダラと雑談が続き、達成感もないが、チームの顔を見てマネジャーが安心している。
会議が下手なことも気になる。参加する必要のないメンバーが出席するような無駄はもちろん、事前に目を通しておけばいいだけの大量の資料を、その場で時間をかけて説明するようなケースも多い。意見を交わす場面になったらなったで、積極的に発言しない人がいたり、長々と話をするだけで結局、何を言いたいのかわからない人もいる。
これでは生産性が上がらなくても無理はない。無駄な会議時間をコアな業務に生かせば、生産性は上がるし、定時で仕事を終了できるだろう。議事録を残さないような会議はおおむね代替手段がある。そもそも会議をやる必要がないか、少人数で短時間の面談で済ませられるものも多い。
Web会議で顕著になった“会議疲れ”
なぜ会議の話を持ち出したのかというと、新型コロナ禍がきっかけで急速に始まったテレワーク、なかでも増えたWeb会議に思うところがあるからだ。「Skype」のほか、今年初めまではほとんど存在が知られていなかった「Zoom」(写真1)や「Cisco Webex」「Microsoft Teams」「Google Meet(旧称:Hangouts Meet)」といったクラウドサービス型のWeb会議システムが普及した。特に一気に広がったZoomを低コストで便利に使わせてもらっている身として感じるのは、リアルな会議との違いである。
話は横道にそれるが、米Zoom Video Communications創業者兼CEOのエリック・ヤン(Eric S.Yuan)氏(写真2)の生い立ちを知るにつけ、能力の高さ、適応性の高さ、行動力の高さ、転身ぶりに驚かされる。日本もIT人材育成論が盛んだが、きわめて優れた人材は自ら育つもので、育てられるものではないことがわかる。必要なのは育つための環境作りではないかと思う。
本題に戻ろう。対面での会議や訪問してのミーティングがしにくくなる中で、手軽に招集・開催ができるWeb会議が毎日のように開催される。インラクティブなところはリアルな会議に似ているので、1対1のミーティングではリアルと遜色なく対応できて実に便利だ。電話と違って表情も手に取るようにわかる。
問題は多人数での会議である。にわかに普及したこともあって、主催者(ホスト)が運営に慣れていないことが多い。参加者もサービスの機能を十分理解しているわけではないので、操作に戸惑うこともよくある。発言者以外が音声をミュートにしていないとハウリング(鳴音)で聞きづらくなったり、リモート参加者のネットワーク品質が悪いと聞き取れなかったり、PCやネット環境に基づく不具合もよくある。
リアルな会議と大きく異なるのが疲労感である。資料が共有されるので常に画面を見つめている。時々聞きづらくなる発言を逃さないように集中する必要がある。発言を同時にしないように常にタイミングを考えながら発言のスタンバイもしている。1時間もこれらを継続していると、リアル会議にはない疲労感がある。それにもかかわらず、会議が3時間近くも続くことがある。
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