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新任CIOがやるべきことは何か?─徹底した情報収集から戦略策定、事業リスクへの目配りまで

パーソルホールディングス 執行役員CIO 古川昌幸氏が実体験を披露

2021年4月22日(木)田口 潤、杉田 悟(IT Leaders編集部)

IT化の遅れを取り戻し、DXに舵を切る必要が高まる中、外部からCIOやCDOを招聘する企業が増えている。これをCIOやCDOの立場から見た時、何が必要だろうか? 業種や規模などが異なる企業に移籍した時、何をどう実践するべきだろうか? 2021年3月、ビジネスシステムイニシアティブ協会(BSIA)は、意外に語られることが少ないこのテーマを取り上げた。講師は2020年7月にパーソルホールディングス執行役員CIOに就任した古川昌幸氏。移籍組だけではなく、社内異動や昇格組の新任CIOにも役立つ内容だった。

「ハネムーン期間」が過ぎたところで施策を発表

 「ハネムーン期間」―政権交代後、100日間ほどは新政権が暖かく見守られることを意味する言葉だ。新政権はこの期間を有効に使って何らかの施策を用意するなり打ち出すなりして、自らの正当性をアピールする必要がある。そうでなければ野党やメディアからの厳しい批判が待っている。

 同じことが新任のCIOやCDOにも言えるだろう。外部からプロのCIOとして招聘されるケースでも、内部昇格や異動でCIOに就く場合でも、就任間もないうちは会社やCIOとしての仕事に馴染むための期間、いわゆるオンボーディング(乗船)の期間として、しばらくは大目に見られる。しかしオンボーディングの期間を過ぎたら、何らかの方針や施策を示す必要があるのだ。

写真1:パーソルホールディングス 執行役員CIOの古川昌幸氏

 では何をどのように示せばいいのか? そのためにどんな準備をすればいいのか? これに関してビジネスシステムイニシアティブ協会(BSIA)は2021年3月、定例の勉強会を開催、2020年7月にパーソルのCIOに招聘された古川昌幸氏(写真1)が講師として実践したことを説明した。大きくは①実情把握や人間関係の構築、②IT施策の立案と説明、③その他、がある(図1)。新任のCIOが行うべきことを、幅広くカバーしていたと思えるので紹介しよう。

図1:古川氏が新任CIOとして行ってきたこと
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 なお古川氏は、野村総合研究所(NRI)でITコンサルタントなどを経験した後、味の素に出向し、本社の情報企画部長やシステム子会社であるNRIシステムテクノ(旧味の素システムテクノ)の役員を歴任した。その後、NRIへの復職を経て、2020年7月にパーソルの執行役員CIOに就任している。

最初に徹底した情報収集、1対1のミーティングや事業部門会議に参加

 新任と言っても入社する以上は事前に様々な情報を聞いたり調べたりし、文書などにも目を通しているのが普通だ。しかし会社は生き物なので、それでは分からないことも多い。そこで古川氏が入社後に集中的に、相当の時間をかけて行ったのが、①の実情把握や人間関係の構築、つまり情報収集だった。

 というのもパーソルは、持ち株会社であるパーソルホールディングスの傘下に人材派遣のパーソルテンプスタッフ(旧テンプスタッフ)や、人材紹介のパーソルキャリア(旧インテリジェンス)など国内外136の事業会社を有する。アジアなど海外にも事業会社があり、グループの連結売上高は2020年3月期で9705億円、総従業員数は約5万700人におよぶ大手である。

 もちろん136社がバラバラに事業展開しているわけではなく、2020年4月には1)人材派遣、2)人材紹介、3)ITアウトソーシング/システム開発、4)人材関連モバイルアプリ開発、5)アジアパシフィックに分け、5つのSBU(ストラテジックビジネスユニット)制に移行してもいる。しかし多くはM&Aを経てグループに加わっており、ITやシステムの状況がどうか、何が問題なくて何に課題があるのかなどは、現場を見たり聞いたりしないと分からないのだ。

 実際に行ったのが、ホールディングスの経営陣やSBU長、各SBUの中核会社の経営者、IT責任者などとの、1対1でのミーティングである。コロナ禍ではあったが、時間が許す限り、直接、会って話すようにした。相対的に本音を聞きやすいし、雑談もできるからである。「最初の1カ月で35人と話しました。資料を用意して下さる方もおられたので助かりました。時間はおおむね1時間くらいです」(古川氏)。これだけで35時間、事前準備を含めるともっと多くの時間を使ったことになるが、「直接話をするのはとても大事です。文書や資料では分からないことが分かりますから」と話す。

 それだけではなく、出席する義務も権利もない各SBUの経営会議にもオブザーバーとして参加した。SBUや事業会社による組織風土や事業構造の違い、課題などを把握するだけでなく、1対1でのミーティングで得た情報を補完する意味合いもある。「例えば、同じ人材事業でも派遣と紹介ではコスト構造が真逆であることや、共通サービス費用を各社に一律に配賦するのが難しいこと、小規模な会社にはホールディングスが手厚くサポートする必要があることなどが分かりました」。

 BSIAの定例会で古川氏が主に解説したのはこれらのことだが、特に入社後の1、2カ月は直属の部下とのミーティングを含め、あの手この手で情報収集に努めたという。

●Next:オンボーディング期間後に行ったこととは?

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