[技術解説]

ModelOps、コンポジットAI、AIバイアス回避─“分析/AIの民主化”に向けたSAS Viyaの機能

2021年8月12日(木)鈴木 恭子(ITジャーナリスト)

アナリティクス、クラウド、そしてAI。デジタル時代の主役級と言える3つのテクノロジーに取り組むITベンダーの数は多く、熾烈な市場競争を生んでいる。統計解析/アナリティクス専業のSAS Instituteにとっても、ここにフォーカスするのは必然で、主力製品である「SAS Viya」への機能実装によって、ユーザーのニーズに応えようとしている。本稿では、SAS Institute Japanの発表内容から、SAS Viyaの現行バージョンにおける“分析/AIの民主化の実装度合い”を確認してみる。

「ModelOps」でアナリティクスモデルを自動デプロイ

 国内でもAIの業務活用が本格化し、マーケットが活況を呈している。IT専門調査会社のIDC Japanが2021年6月に発表した「国内AIシステム市場予測」によると、2020年の国内AIシステム市場規模は前年比47.9%増の1579億8400万円。同社は「この市場はコロナ禍でもICT支出抑制など大きなマイナスの影響を受けていない。今後も投資重点領域として継続的に成長する」と予測している。

 ベンチャーやスタートアップを含め、AI市場のプレーヤーは非常に多いが、長年統計解析/アナリティクス分野に携わる米SAS Instituteもその1社だ。SAS CloudとSAS Viyaを核にしたクラウドアナリティクス戦略の中で、製品へのAIの適用と、顧客企業の活用にフォーカスしている。SAS Institute Japanでこの領域を率いる小林泉氏(写真1)によれば、「SAS Viyaのリリースで、アナリティクス/AIをクラウド上で活用したいというニーズは着実に高まっている」という。

写真1:SAS Institute Japan ソリューション統括本部 クラウドアナリティクス統括部 エンタープライズ・アナリティクス・プラットフォーム・グループ部長兼クラウドソリューショングループ部長の小林泉氏

 小林氏は、「現在のアナリティクス/AIの課題は、作業時間の8割がデータ加工に費やされていること。例えばAIのモデルを作成しても、それを業務に組み込むためには一定の処理が必要になる」と指摘する。

 そうした課題に、SASは主力のアナリティクス/AIプラットホームのSAS Viyaで応える構えだ。Viyaは現行バージョンでサービスのコアにコンテナ/マイクロサービスベースアーキテクチャを採用するという大変更があった。KubernetesがViyaを駆動している状態であり、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリ)プロセスをアナリティクスやAIの世界に適用しようとしている。

 SASは、サービスや機能が先進的でも、実装に至らなければ意味がないことを重く見ている。同社によれば、現在開発されたアナリティクスモデルの9割はデプロイに3カ月以上、4割は7カ月以上を要しており、開発されてもその半分以上は業務に実装されていないという。「この課題を解決するため、SAS Viyaではモデル実装プロセスを標準化し、自動デプロイする『ModelOps』のアプローチを採用した」と小林氏は説明する。

図1:モデル実装プロセスの標準化と自動化には「ModelOps」のアプローチが不可欠だとSASは主張する(出典:SAS Institute Japan)
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 ModelOpsは、アプリケーション開発におけるDevOpsを基に考案されたアプローチだ(図1)。開発→検証→テスト→業務実装の進捗ペースを高めながら品質も担保することを目指している。SASはModelOpsアプローチを採ることで、モデル開発を担うデータサイエンティストとIT部門がシームレスに連携し、業務アプリケーションへのモデルの組み込みが迅速になるのを期待している。

「コンポジットAI」利用の敷居を下げる

 SASは、主力のViyaが威力を発揮する領域の1つとして、「コンポジットAI(Composite AI)」を挙げている。

 コンポジットAIは、異なるアルゴリズムを組み合わせて最適なモデルを構築するアプローチで、米ガートナーの先進技術ハイプサイクルにも登場する注目の技術である。エッジAIスタートアップ企業のエイシングが運営するEdge AI Research Center(EARC)による解説は次のとおりである。

 「AI技術には機械学習だけでなく、ルールベース AI やその他最適化手法なども含まれる。例えば現在のAI技術の主流となっているニューラルネットワークと、エキスパートシステム等で使用されてきたシンボリックAIの融合の試みがなされている。ニューラルネットワーク単体では難しい画像質問応答(VQA:Visual Question Answering) 問題を良い精度で解くことに成功している」

 SAS Viyaの現行バージョンでは、モデル構築の際にGUI操作の「SAS Enterprise Guide」を利用できるが、この機能がコンポジットAIを可能にする。以前はオンプレミスの「SAS 9」でのみ提供されていた機能だ。ユーザーは、SAS Enterprise Guideを用いて、SASの実証済みアルゴリズムや最新のオープンソースソフトウェアを、ドラック&ドロップで組み合わせて、最適なモデルを構築できるという(図2画面1)。

図2:SASが提供するコンポジットAIとその種類(出典:SAS Institute Japan)
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画面1:「SAS Enterprise Guide」の画面。GUIによる操作容易性が差異化ポイントの1つになっている(出典:SAS Institute Japan)
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 かねてからSASでは「分析の民主化」を掲げ、持つスキルにかかわらず、すべてのユーザーがアナリティクスを活用できる環境の重要性を説いている。小林氏は、「SAS Enterprise Guideは多くのユーザーに馴染みのあるWindowsライクなGUIを採用している。SAS 9を導入した顧客に導入の決め手となった理由を尋ねると、この機能が備わっているからとの声が少なくなかった。今回、ViyaでもSAS Enterprise Guideが利用できるようになったことで、クラウドへの移行が加速すると期待している」と話す。

 実際、コンポジットAIをGUIではなく、プログラミングで構築しようとすると一定のスキルを要する。一方、SAS Viyaでは課題に最適なモデルの構築だけでなく、「課題に対してどのようなアルゴリズムを利用すべきか」までをサジェスチョンして自動実行してくれる。

●Next:AIバイアスがもたらす「AIのブラックボックス化」にどう対処するか

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