[麻生川静男の欧州ビジネスITトレンド]

提唱から10年、Industrie 4.0への取り組みの実態と10の提言:第26回

2021年9月30日(木)麻生川 静男

ドイツが国家的規模で始めた第4次産業革命の取り組み、Industrie 4.0が2021年の今年でちょうど10年である。この10年間の進展、企業における取り組みの実態、今後解決すべき課題について、ドイツのBitkomが国内の経営幹部を対象に行った調査結果を公表している。今回は、その内容の要点をピックアップして紹介しよう。

独BitkomがIndustrie 4.0の10年を調査

 Industrie 4.0(Industry 4.0、インダストリー4.0、略称:I4.0またはI4)をドイツ工学アカデミーとドイツ連邦教育科学省が公に提唱したのは2011年。ドイツが国家を挙げて取り組んだ、製造業を中心とする産業界のデジタル化構想である(関連記事本誌のIndustrie 4.0関連記事一覧)。

 開始から10年という節目の2021年、独Bitkom(ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会)が加盟企業にIndustrie 4.0の取り組みの現状と課題を尋ねた調査結果を同年8月に公表した。レポート全文はPDF形式で7ページあるが、その要点を紹介しよう。

 Bitkomの調査は、2021年2月から3月にかけて電話インタビューで実施。Bitkom加盟企業のうち、従業員100人以上のドイツ企業の経営者、製造部門トップなど551人から聞き取りを行っている。

 まず、Industrie 4.0の導入の現状を数字の上からざっくりと眺めてみよう。進捗状況について状況を数字で表現すると次のような結果となる。;

●95%の企業はIndustrie 4.0をチャンスととらえている
●83%の企業はIndustrie 4.0のアプリケーションをすでに使っているか、使う計画がある
●66%の企業はIndustrie 4.0への取り組みが遅れている、あるいは取り残されていると感じている

 自社におけるIndustrie 4.0への取り組みは何か。その阻害要因も尋ねている。

●資金不足:77%
●データ保護にかかわる要件を満たせない:61%
●ITセキュリティにかかわる要件を満たせない:57%
●スキルを有する人材の不足:55%
●テーマが複雑でどうすればよいか分からない:52%

 Industrie 4.0に対してドイツ企業は概して高い期待感を持ち、導入にもかなり前向きである。ただ、さまざまな障害があって自社での活用が進まないという現状がうかがえる。とりわけ、中小企業でIndustrie 4.0が進んでいない要因は次の4点にあるとBitkomは結論づける。

●自社のノウハウが不足している
●データ保護対策が十分できない
●取り組みによるDXの効果が算定できない
●現在運用中のシステムへの統合が難しい

 ところで、Bitkomより少し時期は遅れるが、2021年6月に、米Molexが市場調査会社のDimensional Researchに委託したIndustrie 4.0の調査結果を発表している。そこにはBitkomの調査とは異なった観点からの指摘がある。

 Molex/Dimensional Researchの調査対象は216人で、Bitkom調査と異なり、北米在住のエンジニアが大半を占める。つまり、米国の現場で取り組まれているIndustrie 4.0の実態を明らかにしようとした調査だ。同調査では、米国企業における最大の阻害要因を「経営者の理解不足と革新する意欲不足」だと指摘している。その背景には、企業文化、ビジネスモデル、革新的技術の変革に付いていけないという事情があるようだ。この辺りは調査対象者が経営者主体のBitkom調査からは見えてこなかったことである。

製造業を中心とするデジタル産業革命を提唱したIndustrie 4.0は、今後、さらなる発展を遂げることができるか

●Next:Industrie 4.0の発展に向けて10の課題を洗い出して提言

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