[オピニオン from CIO賢人倶楽部]

CIOは保守か革新か? DX推進でなすべきこと

パーソルホールディングス 執行役員CIO 古川昌幸氏

2021年12月14日(火)CIO賢人倶楽部

「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、パーソルホールディングス 執行役員CIO 古川昌幸氏によるオピニオンである。

保守を志向する今の若年層

 2021年10月31日、任期満了に伴う衆議院議員選挙があった。結果は読者の皆様も知るところだが、選挙前には自民党の劣勢が報道され、また当日の出口調査の結果からしても過半数ギリギリ確保という情勢だったにも係わらず、261議席という絶対安定多数を確保した。なぜ予想が外れたのかも興味深いが、それ以上に筆者は投票行動の分析結果に非常に興味を持った。年齢層が高い有権者ほど野党に、20代や30代の若い有権者は自民党への投票が高かったことが示されたのである。

先の衆院選の結果から、20代や30代の若い有権者の保守志向がうかがえる

 誤解を恐れずに言えば、変化を望んでいるのは50代や60代であり、若い層は保守的だった。これは選挙に限らない。コロナ禍によりテレワークに取り組んだ企業は多いが、パーソル総合研究所の調べで意外なことが分かった。20代の若手社員はテレワークに対してメリットよりもデメリットを感じ、出社意欲が他の年代より高いのである。背景には、ちょっとしたことを身近な先輩に聞くことができず、自分は他者と比べて成長が遅れているのではないかという不安があるようだ。このような面からも若年層の保守的な志向が見てとれる。

 読者の皆様はどうだろうか。変化を嫌がるのはおおむね昭和世代であり、若年層は改革志向が強いという印象を持たれている人が多いのではないか。しかし、実態はそう単純ではなく、むしろ真逆と言ってもいいようである。

ITとDXの位置づけは保守と革新?

 経済産業省が2018年9月にDXレポートで示した「2025年の崖」などをきっかけに、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みは加速したように思う。しかし、何らかの成果を上げている企業はまだまだ少数である。これまでIT(情報技術)というくくりで、「経営とITは両輪」という言われ方をしてきたわけだが、そもそもITとDXは何が違うのだろうか。

 IT組織とDX組織を分けて設置している企業を見てみると、IT組織は効率化や生産性向上を実現し利益の確保を目指す「守り」=保守の組織。DX組織は新サービスの開発やデータ利活用によって競争力を高め売上を伸ばす「攻め」=革新の組織と位置づけている。どちらもデジタルテクノロジーを使う点は共通なので、別々の組織として設置する必要があるのか疑問があるが、CIOが営業やマーケティング、製造などのライン業務に精通していないということから、ライン部門出身者をCDO(Chief Digital Officer)にして組織も分けるのが予定調和の1つの智恵なのかもしれない。

 今日、企業の中期計画や事業戦略にDXの文字を見ないことはなく、継続的に革新に取り組んでいかなければ企業の事業成長が望めない時代に変わったことは、読者も異論のないところだろう。しかし冒頭の日本人の特性をみても、社員(特に若手)は心の奥では革新よりも保守を望んでいるのではないか。そこに目を瞑って革新(DX)一辺倒に突き進むと、足元がぐらつくのではないだろうか。

 特にコロナ禍でテレワークやオンライン会議が増えている今日、経営陣は若年層の社員とのコミュニケーションがコロナ禍以前に比べて不足しており、意識や認識のギャップを捕まえ切れていないと認識すべきであり、足元のグラつきを起こさないようにケアしなければならないと筆者は考える。

 そうすると「じゃあ、ITとDXの比率はどのくらいがベストなのか?」という質問が出てくる。はっきり言ってこれには正解はないと筆者は考える。長い社歴があり、まだまだITに80%を費やしてインフラや基幹システムの刷新が必要な既存企業と、スタートアップ企業のように生まれながらにして100%近くDXへ投資して新たなサービスや事業を展開していく企業とはまったく異なるからだ。筆者の会社で言えばITが60%、DXが40%というところである。

 むしろ問題なのが、自社のDXはうまく行っているのかという評価のあり方である。DXへの投資がIT投資を上回れば「勝ち」なのかという話でもある。次から次へとPoC(概念実証)を実施しDX投資を食いつぶしているだけでは、決して「勝ち」とは言えないだろう。施策によって「価値」を生み出すことが本来の「勝ち」であると筆者は考える。

●Next:DX推進でCIOが急務で取り組むべき2つの重要な施策

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