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[技術解説]

「プロセスマイニングはDXの最後のピース」─Celonis村瀬社長が訴える"プロセスのデジタル化"の必然

2022年2月28日(月)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)

プロセスマイニングのマーケットリーダーである独Celonis(セロニス)。2011年にミュンヘンで創業して以降、急激な成長を遂げたユニコーン企業が、次の10年に向けて、グローバルレベルで組織・人材・製品を強化している。本稿では、2021年12月に日本法人の社長に就任した村瀬将思氏へのインタビューを基に、Celonisがリードするビジネスプロセスへのアプローチが日本企業のデジタル化をどう変えていくのかについて展望してみたい。

急成長に伴いグローバルで組織強化

 2021年10月、独Celonisは同社のCPO(Chief Product Officer:最高製品責任者)として、米グーグルでプロダクトマネジメント部門バイスプレジデントを務めていたアリエル・バーディン(Ariel Bardin)氏を迎えたことを発表した。グーグル在籍中の16年間で「Google Payment」を含む数々のプロダクトをローンチ、約10年にわたって「Google AdWords」プロダクトチームを率いるなど、デジタル時代のプロダクト開発を主導してきた人物である。バーディン氏は今後、Celonis共同創業者・共同CEOのアレックス・リンケ(Alex Rinke)氏に直接レポートし、主力製品「Celonis EMS」の製品戦略とロードマップに責任を負うことになる。

 バーディン氏をはじめ、ここ最近のCelonisにはIT業界の著名なエグゼクティブが世界中からジョインしている。CRO(最高収益責任者)に米セールスフォース・ドットコム出身のミゲル・ミラノ(Miguel Milano)氏、CFO(最高財務責任者)にグーグル出身のカルロス・キルジュナ(Carlos Kirjner)氏など、巨大IT企業でグローバルな事業を統括していた人物の名前も見える。プロセスマイニング市場のリーディングカンパニーとして急成長を続けるCelonisだが、事業規模の拡大に合わせて、オペレーションに関しても業界トップレベルの人材を揃えつつあるようだ。

 経営陣の再編は日本にも及んでいる。2021年12月1日、日本法人の代表取締役社長に、ServiceNow日本法人で執行役員社長を約6年間務めた村瀬将思氏(写真1)が就任。米国などに比べてデジタル化が遅れがちな日本企業に対し、「Now Platform」によるワークフローの自動化とSaaSによる負荷の少ないITオーケストレーションを訴え、NTTコムウェアなど国内の有力パートナーとのエコシステムを構築、コロナ禍の期間も含めた実績が認められての新社長起用のようだ。海外に比して日本での知名度がまだそれほど高くないCelonisとプロセスマイニングというコンセプトそのものを、ServiceNowで示した手腕をもってより多くの日本企業に浸透させていくことが村瀬氏の重要なミッションとなる。

写真1:2021年12月1日付でCelonis日本法人の代表取締役社長に就任した村瀬将思氏

 「プロセスマイニングはデジタル変革の司令塔になる」。日本の産業全体のデジタライゼーションを試行錯誤し続けた村瀬氏は、プロセスマイニングの可能性をこう強く信じている。以下、2021年12月、日本法人の社長就任から間もない村瀬氏に行ったインタビューから、Celonisがリードするプロセスマイニング、ビジネスプロセスへのアプローチが日本企業のデジタル化をどう変えていくのかについて展望してみたい。

改めて「プロセスマイニング」とは

 IT Leadersではプロセスマイニングについて都度取り上げてきたが、ここでいま一度、プロセスマイニングとは何かについて振り返っておこう(関連記事プロセスマイニング記事一覧)。

 プロセスマイニングは、2010年代に欧州で生まれたという概念および技術で、イベントログを元に業務の可視化を行い、業務のスムースな遂行を妨げるボトルネックを特定する手法をとる。ユーザーは、特定された問題点に対してすみやかに改善を行い、生産性向上やガバナンス強化、DX推進などにつなげていくことが可能になる。なお、プロセスマイニングの"生みの親"と呼ばれる独アーヘン工科大学教授のウィル・ファン・デル・アールスト(Wil van der Aalst)氏は現在、Celonisのチーフサイエンティストを兼任している(図1)。

図1:“プロセスマイニングの生みの親”アールスト教授によるプロセスマイニングの定義(出典:Celonis)
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 "プロセス"という単語が含まれていることから、プロセスマイニングを従来から存在するビジネスプロセスマネジメント(BPM)と同一視する向きもあるが、もう1つのキーワードである"マイニング"にも目を向けると、両者は大きく異なっていることがわかる。

 プロセスマイニングにおけるインプットデータは、既存の業務システム/アプリケーションのトランザクションログ(イベントログ)だが、過去から現在まで"すべて"のログを元にフローを自動で可視化/分析できる点に注目したい。

 手作業(担当者へのヒアリング、業務プロセスの洗い出し、属人的な分析など)中心となる従来型のBPMでは、調査時点のデータから仮説モデルを構築して分析することが多い。したがって、可視化や分析に時間がかかる割には洗い出されたパターンが限定的で、その精度も低いケースが往々にしてある。また、苦労して作成したモデルも調査時点に限定した一過性の仮説として扱われることも多いため、継続的な業務改善のベースになりにくい。

 一方でプロセスマイニングの場合、マシンラーニング(機械学習)やデータマイニングといったデータ分析技術を活用することで、すべてのログデータが可視化/分析の対象となる。過去から現在まで、あらゆるイベントログを元にフローを自動で可視化できるので、仮説を立てて検証するのではなく、ログという"事実"に基づいたリアルタイムの分析と問題特定が可能になる──これがプロセスマイニングをたらしめる特徴となっている。

●Next:プロセスマイニングは人間のX線診断のようなもの

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