サイボウズは2022年3月18日、オンラインメディアセミナー「サイボウズとが支える災害現場の『今』 ~インターネットテクノロジーによる災害支援の10年史~」を開催した。同セミナーでは、サイボウズ 社長室 災害支援チーム リーダーの柴田哲史氏が、10年間にわたって取り組んでいるICT活用による災害現場支援について、kintone導入による効果や最新の活用動向、東日本大震災、熊本地震、熱海市の土砂災害の支援現場の様子とともに紹介した。
東日本大震災当時の災害支援の課題
都道府県・市区町村に1つずつ設置されている社会福祉協議会(以下、社協)は、地域福祉の推進を目的とした民間団体である。災害時には被災者の生活支援、ボランティアセンターの設置・避難所の運営を行うが、通常業務に加えて行うため負荷が増大しがちだ。サイボウズによると、2011年3月発生の東日本大震災発生以降、東京都調布市社協でも大量の情報整理や情報発信、問い合わせ電話への対応、メールのやり取りの属人化、アナログの情報整理などに課題があり、避難所開設作業など優先すべき業務にあたれなかったという。
サイボウズ 社長室 災害支援チームでリーダーを務める柴田哲史氏(写真1)はこのとき米ハワイでIT企業を経営していた。同氏は社協職員から相談を受けたのをきっかけに調布市で災害支援を開始。避難所運営支援として、避難所の状況や物資の募集などを伝えるホームページの開設、ボランティア登録Webフォームの作成、約3000人の登録ボランティアのマネジメントを約2カ月間にわたり行った。
熊本地震現場支援でkintoneを活用
柴田氏は2015年にサイボウズに入社。同社でユーザビリティラボの立ち上げに携わりながら、東日本大震災での支援以降も国内の被災地で災害支援を続け、ICT活用による課題の解決にあたってきた。
同氏は、2016年4月に発生した熊本地震の現場支援をサイボウズが行ったときの取り組みを紹介した。震災発生後、ボランティアの登録受付や被災者ニーズの管理の状況が見えず、現場職員へ負担がかかる状況が続いていたという。
そこで現場に入った柴田氏が最初に取りかかったのが、内部の事務処理の効率化だ。災害時の膨大な業務を処理するために理想とするツールは、「現場で構築が可能で、現場の職員が柔軟に変更することができ、日ごろから使い慣れていること」(柴田氏)。管理システムは過去の災害においても導入されてきたが、多機能のシステムを取り入れても、現場では活用しきれていないことが多々あった。
大分県竹田市に設置された南阿蘇村へのボランティアベースキャンプでは、ボランティアの人数が予測できないという課題に対し、柴田氏はサイボウズのクラウド型業務アプリケーション開発・実行環境(PaaS)「kintone」を用いて、ボランティア参加予約システム導入を短期間で開発した。
熊本地震では17カ所に開設されたボランティアセンターの最新情報を熊本地震特設サイトで発信すると同時に、サイトを通じて寄せられた問い合わせを、kintone上に集約し、遠隔地から対応できるものには対応するなど、現場の負担減に成功している。
柴田氏は、改めてkintoneの特徴として、「クラウドで情報共有」「アジャイル開発」「ノーコード開発」を挙げ、それらがいかに災害支援の現場で有効であるかを説明した(図1)。
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「クラウドで情報共有を行うことで、どこからでも災害現場の最新状況にアクセスできる環境を整えられる。これにより現場は問い合わせ対応よりも優先度の高い、避難所運営や被災者支援などの業務に注力することが可能になった」(柴田氏)。また、アジャイル開発、ノーコード開発の利点として、災害の現場スピードや状況に合わせて、アプリ開発・運用ができる点を挙げ、「簡単に作成・修正ができるため、ITの専門知識が少ない職員でもアプリの作成が行える。これらの特徴が災害現場のニーズに合っていた」と語る。
●Next:災害時だけでなく平時も―アジャイル開発を定着させる取り組み
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