[市場動向]

「Powered by Celonisで日本を元気に」─プロセスマイニングの国内普及に全力を挙げるCelonis

2022年4月7日(木)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)

Celonis日本法人は2022年3月23日、2023年度の戦略記者説明会を行った。2021年12月に同社の代表取締役社長に就任後、初のプレス発表会を迎えた村瀬将思氏は開口一番に「私がCelonisでやりたいことはただ1つ、“Japan Powered by Celonis”─テクノロジーの力で日本を元気にするということ」と強調、日本企業の生産性を上げるために全力を尽くす姿勢を示した。

「Dはできていても、肝心のXはできていない」日本企業

 「世界3位の経済大国でありながら、幸福度指数は世界40位。この日本の状況を何とかしたい」──村瀬将思氏(写真1)は自身がCelonisの社長に就任した最大の理由についてこう語る。日本の労働生産性の低さはコロナ前から指摘されていたことだが、2018年度からは3年連続で下降しており、パンデミックが本格化した2020年度は前年比マイナス3.4%でリーマンショック以上の落ち込みを見せている。村瀬氏はこの現状について「日本の労働生産性は主要先進7カ国の中でも常に最下位で、ここを改善しなければならない」とあらためて強調する(図1)。

写真1:Celonis 代表取締役社長の村瀬将思氏
図1:日本の労働生産性は3年連続で下降を続けており、主要先進7カ国では最下位を独走中。この状態を「DXで何とかしたい」と村瀬氏(出典:日本生産性本部、Celonis)
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 日本社会の生産性を上げるには、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することが必要だと、経済産業省が2021年8月に公表した「DXレポート2.1」でもまとめられている。実際、コロナ禍に入ってからは、デジタル化が遅れがちな日本企業であっても、テレワークの導入やワークフローのクラウド移行などが急激に進むことになった(関連記事デジタル産業への具体的道筋は?「DXレポート2.1」の真意を読み解く)。

 しかし村瀬氏は「日本企業が言う"DX"は、残念ながら単なる業務のデジタル化 、デジタイゼーション/デジタライゼーションにとどまっている。DXのD(Digital)はできていても、データを駆使してビジネスを変革する肝心のX(Transformation)はできておらず、クールなUIがあったとしても、非効率性はそのままだ」と厳しく指摘する。

 前述のDXレポートでは、日本が目指すデジタル社会/産業の姿について「社会全体でデジタル化が進む中で、企業はこの不可逆的な変化に適応し、データとデジタル技術を駆使して新たな価値を産み出すことが求められている」と記されている。つまり日本企業がDXを実現するにはデータとデジタル技術の両方を駆使することが必要であり、村瀬氏はこれを「データによるビジネスモデルの変革と、その実行を迅速にデジタルで提供するプラットフォームが必要」と言い換えている。

プロセスマイニングで見えない非効率性をあぶり出す

 2011年に独ミュンヘンで設立されたCelonisはプロセスマイニング市場のパイオニアとして欧州を中心に急速に成長を遂げ、現在は5期連続で年間経常収益(ARR)100%増を達成、企業価値評価額は1兆2000億円を超えるとされている。顧客にはシーメンス(Siemens)やABB、ルフトハンザ(Lufthansa)、ドイツテレコム(Deutsche Telekom)、Uberなど欧米の大企業が名前を連ねるが、特にシーメンスによる大規模なアダプションはCelonisのビジネスを飛躍させ、プロセスマイニングのポテンシャルを世界に知らしめる大きなきっかけとなった。

 現行のフラグシップ製品は「Celonis EMS(Execution Management System)」。名称に"Execution(実行)"が含まれていることからもわかるように、企業が抱える課題を見つけ出して解決策を示し、そのすみやかな実行を自律的に支援するプラットフォームを指向する。

 Celonisは自社のパーパスを「プロセスマイニングとData Executionにより、人々の働き方を変え、持続可能性を担保し、人々と社会のパフォーマンスを無限大に開放する」と掲げており、プロセスマイニングとData Executionが同社にとってのコアコンピタンスであることが伝わってくる(写真2)。

写真2:Celonisの3人の創業者(左から、共同CEOのアレキサンダー・リンケ氏、CTOのマーティン・クレンク氏、共同CEOのバスティアン・ノミナヘル氏)とパーパス。プロセスマイニングとData Executionをコアコンピタンスに位置づける

 ここで簡単にCelonis EMSの特徴を示しておく。企業内にはさまざまなシステムが存在し、多くのビジネスプロセスがその上で動いているが、複雑化やサイロ化、あるいは人材不足、技術的負債、ワークフローの硬直化、さらにはパンデミックや戦争も含めた世界情勢の変化による影響もあり、常に生産性や効率性が下がるリスクを抱えている。

 「従業員の離職率が高い」「運用コストが増加している」「CO2排出量が増加している」「新規のビジネス機会を逃すケースが多い」。こうした生産性や効率性の低下を示すサインが明らかになったとき、その主要な原因はどこにあり、解決のために何をすべきなのか。Celonis EMSはプロセスマイニング技術でもって"サイレントキラー(見えない非効率性)”をあぶり出し、Data Executionで改善のためのビジネスオペレーションを実現する(図2)。

図2:Celonis EMSのアーキテクチャ(上)と、企業システムのエンドツーエンドな業務実行状況の可視化。「ビジネスを阻害するサイレントキラー(見えない非効率性)を見つけ出すところからDXは始まる」
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 Celonisはこれを「企業システムに毎日レントゲン検査を実施し、そのデータを基に自律的かつ継続的に修復を図っているようなもの」と表現する。実際、導入企業の成功事例では「運転資金の最適化」「資産の活用状況改善」「カスタマーサービスの改善」などをCelonis EMSで実現したケースが目立つ。

 レントゲンのX線が目に見えない体内の疾患を明らかにするように、プロセスマイニングが企業内にひそむ見えないボトルネックを可視化する、そしてそれを改善するアプローチを提案し実行する、それらのすべてはデータドリブンで自律的に行われる──これがCelonis EMSのケーパビリティである。

 Celonis共同創業者で共同CEOのバスティアン・ノミナヘル(Bastian Nominacher)氏は「Celonisはこれまで2000社以上にビジネスプロセスを変革する手段としてプロセスマイニングを提供してきた。当社の技術だけが本当のプロセスマイニングを実現できる。デジタルレイヤのみのデジタル化では効果は少ない」と語っている(図3)。

図3:主なCelonisユーザーの成果。ボトルネック改善により、調達プロセスの短縮や顧客エンゲージメントの改善、オペレーションコストの削減などを実現したケースが多い
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●Next:Celonisが取り組むプロセスマイニングの日本普及策とは?

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