コンテナ、仮想サーバー、物理サーバーなどのワークロードの多様化、マルチクラウド活用の拡大など、データの運用管理は複雑化を増している。この課題を解決するキーワードが、「一元管理とモビリティ」だ。3月10日に開催された「データマネジメント2022」のセッションに、ヴィーム・ソフトウェアの亀田敏広氏が登壇し、マルチクラウド環境下におけるワークロードのデータ保護の最善策について解説した。
企業の約9割がマルチクラウドを指向
周知のとおり、クラウドの利用モデルには、プライベート/パブリック/ハイブリッド/マルチクラウドなどのざまざまなパターンがあるが、ヴィーム・ソフトウェアの亀田敏広氏は、Flexera社の調査をもとに、「92%の企業が自社のクラウド戦略としてマルチクラウドを指向している」と述べる。
企業がマルチクラウド戦略を進める目的は大きく2つに集約される。1つは、コスト、AI/機械学習等の強み、提供リージョンなど、「各クラウドサービスの強みを“良いとこ取り”する」ため、もう1つは、「BCP(事業継続)対策の追加のレイヤとして利用する」ためだ。
亀田氏は、「これらのマルチクラウド戦略のメリットを享受するためには、システムごとに異なる環境間での移行性、すなわち“モビリティ”の存在が前提となる」と訴える。急速に進化するクラウドの場合、自社にとって最適なクラウドは絶えず変化する可能性があり、柔軟にサービスを選択・利用できるようにするためには、モビリティが不可欠だ。万が一の障害発生時にも、モビリティが確保されていれば、異なる環境のクラウドにすばやくシステムを移行し、業務やビジネスの停止を回避できるようになる。
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データ保護のサイロ化によりモビリティの分断が発生
クラウドにおけるモビリティを実現する方法には、いくつかパターンが考えられる。その1つに「レプリケーション」があるが、システム規模が拡大した場合、コストや複雑性が増すという課題が生じる。そのため亀田氏は、「多数のシステムを対象とするモビリティ現実解はバックアップ/リストアによる手法が有効だ」と語る。企業はすでにバックアップを取得しており、存在するバックアップデータを活用すればシンプルかつ低コストにリストアが実現可能だ。ただし、その場合は、複数の異なる環境を扱うことのできるバックアップツールの選択が必須となる。
また、マルチクラウド戦略を推進していく場合、オンプレミスあるいはプライベートクラウドで運用されていたシステムを複数のクラウドへ移行させていくことになるが、ここで問題となるのは、異なるアーキテクチャを有した環境の増大だ。
「異なる環境間では、互換性や統一された管理ツールがないため、環境ごとにデータと運用が分断されてしまう。バックアップツールも同様で、クラウドごとに異なるツールが利用されることでデータ保護のサイロ化が発生、モビリティの分断を起こしている」(亀田氏)。
そのため、各環境からデータを開放する手法が求められているというわけだ。
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マルチクラウド環境でもシームレスなバックアップ/リストアを実現
亀田氏は、これらの課題を解決できるヴィーム・ソフトウェアのソリューションを紹介した。同社のソリューションが有する特長の1つが、異なる環境において互換性を気にすることなく、リストアを可能としていることだ。ソフトウェアとして提供される同社の「Veeamプラットフォーム」はクラウド、SaaS、仮想化基盤、物理基盤などのあらゆる環境をバックアップすることができる。リストアに際しても、必要に応じて物理から仮想、仮想からからクラウド化等々、自動変換を行う。これにより、バックアップツールの統一が可能となるほか、Veeamプラットフォームによる運用の統一、そしてモビリティが実現されるようになる。
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サーバーワークロードだけでなくコンテナ環境にも対応
Veeamプラットフォームは、従来の仮想サーバーと、近年、活用が急速に拡大しているコンテナの両方のワークロードにも対応していることも特長だ。これらのワークロードに対して、GUIの設定画面を使って簡単に移行を行うことができる。亀田氏は、仮想サーバー、およびコンテナ環境におけるモビリティの実現について、Veeamプラットフォームの機能を交えながら説明した。
① サーバーワークロード
はじめに、サーバーワークロードのモビリティについて、プライベートクラウドとハイパースケーラとの連携のユースケースを基に解説が行われた。例えば、プライベートクラウドからパブリッククラウドへの移行については、オブジェクトストレージへバックアップを遠隔地保管する「Cloud Tier機能」、ハイパースケーラへのインスタンスに直接バックアップをリストアできる移行機能「Direct Restore機能」を紹介。これらの機能を用いてプライベートクラウドからパブリッククラウドに簡単に移行できることが説明された。
また、パブリッククラウド内でのバックアップについても、専用のバックアップ製品である「Veeam Backup for AWS/Microsoft Azure/GCP」によって可能になる。亀田氏は、「AWS、Azure、GCP向けに3つのラインナップを提供しているが、それぞれの管理インタフェースはほぼ同じUIで提供しているため、ハイパースケーラ間でのデータ保護について、運用を統一することが可能となる」とその優位性を強調した。
さらに、パブリッククラウドからプライベートクラウドへの戻りの移行についても、Veeam Backup for Public Cloudで取得されたパブリッククラウドのバックアップを、外部のプライベートクラウド側から透過的に扱う「External Repository」を利用して容易に行えることが解説された。
② コンテナワークロード
続いて、コンテナワークロードにおける、ヴィーム・ソフトウェアのソリューションのユースケースが紹介された。亀田氏は、「私達は2020年、Kubernetes環境のバックアップソリューションを提供するKastenを買収したことで、コンテナ環境のバックアップについても市場優位性を確保している」と強調。Kastenが提供する機能により、複雑なコンテナ環境においても、柔軟かつ容易なバックアップが可能であることを説明した。
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マルチクラウド戦略の実現はモビリティが必要だが、実際の環境では既存のデータ保護ソリューションのサイロ化によって、データおよび管理運用が分断し、その結果モビリティが分断されている状況にある。
亀田氏は、「このような問題を解決するためのテクノロジーが求められている。ヴィーム・ソフトウェアのソリューションを利用することで、複雑なマルチクラウド環境間におけるモビリティと一元管理を実現できるようになる」と訴え、セッションの幕を閉じた。
●お問い合わせ先
ヴィーム・ソフトウェア株式会社
URL:https://www.veeam.com/jp/salesinc.html
電話:0120-394-029(平日 9:30-12:00/13:00-17:30 土日祝、年末年始を除く)
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