童話「赤ずきん」が教える教訓
2022年5月19日(木)CIO賢人倶楽部
「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、J.フロント リテイリング グループデジタル統括部 チーフ・デジタル・デザイナーの野村泰一氏によるオピニオンである。
グリム童話『赤ずきん(Little Red Riding Hood)』を知らない人はいないでしょう。おばあちゃんのお見舞いに行った女の子が、おばあちゃんになりすましたオオカミに食べられてしまうものの、通りかかった猟師に助けられ、逆にオオカミを懲らしめる話です。悪いオオカミを懲らしめるところに関心が向きがちですが、物語が教える本質はそのような目に遭ってしまった赤ずきんの行動に対する戒めの方だと思うのですが、いかがでしょうか。
だれもが知る古典作品である赤ずきんのストーリーは、深層心理学的な解釈がなされることも多い(イラスト:Getty Images)話を赤ずきんが出発する前のお母さんとの会話に戻して、検証してみます。赤ずきんはお母さんから以下の3つのことを言われ、約束して家を出ました。
●目的は病気になったおばあさんの家にお見舞いに行き、パンと葡萄酒を届けること
●道草をしてはいけないこと
●オオカミに話しかけられても無視すること
赤ずきんのミッションは、確実におばあさんに届け物をすることでした。しかし道中に声をかけてきたオオカミの話を聞き、花を摘んでいくとおばあさんがもっと喜ぶという話を採用し、届け物をするという最大の目的のプライオリティを下げてしまうといった過失を犯してしまいました。さらにオオカミと会話をしてはいけないという母親との約束を反故しています。これは契約違反ですよね(笑)。
極めつけはオオカミの質問に素直に答えてしまい、おばあさんの家の場所やおばあさんが病気であることなどをディスクローズしたことです。明らかに情報セキュリティ上、問題のある行為です。つまり赤ずきんの話はミッションをおろそかにし、契約を履行せず、情報セキュリティに対する意識の低い人は必ず報いがある──という戒めであるように思えるのです。
そんな赤ずきんにも挽回のチャンスがやって来ます。おばあさんの家に着いた後のおばあさんになりすましたオオカミとの会話です。赤ずきんは、おばあさんの声や耳の形状、そして口のサイズと次々に違和感をおぼえていきます。残念なことにこの気づきに対して自分で判断しようとせず、悪意のあるオオカミの言い分を聞いてしまいました。これだけのヒントがありながら、思い込みと自己判断からの逃避により彼女は危機を回避できなかったのです。残念で仕方ありません。
●Next:環境変化が激しい中、危険や脅威をどう回避すべきか
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