DXに向けた活動が広がりながらも、必ずしも成果は上がってはいない。原因の1つとされているのが、現場社員の意識改革に足る情報が不足していることだ。6月14日にオンライン開催した「プロセスマイニング コンファレンス 2022 LIVE」(主催:インプレス IT Leaders)に登壇したMeeCap代表取締役社長の是澤優和氏は、PCのログ収集/可視化/分析による有効性を訴求する。その具体的な手法とは──。
DXの推進で欠かせない「社内業務の精緻な把握」
大企業を中心に取り組みが進むDX。その現状を推し量る、大手ITコンサルティング企業の調査結果が存在する。「大企業に勤務する社員の59%が全社的なDXに着手済み。ただし、その約半数で成果が感じられておらず、7%はDX施策の状況把握すらできていない」というのが要約だ。このことが示唆するのは、DXの掛け声が響く一方で、必ずしも進捗は芳しくないという現実である。
ただ、「それは仕方のない面もあります」と語るのはMeeCapで代表取締役社長を務める是澤優和氏だ。「DXは全社業務の抜本変革に向けた活動です。その推進には、現場社員の能動的な変革への参加が欠かせません。そのためには、まずは社員が現場業務を理解しておかねばなりませんが、現状、そこまで気が回っていないケースも散見されます」(是澤氏)。
事実、自身の業務は十分理解しつつも、一連の業務フローでの他業務との関わりや、そこに占める時間やコストまで把握している現場社員は極めて少数派だ。この状況では今の業務をどう変革すべきかのアイデアは湧きにくい。「つまり、情報不足が原因でDXに現場を巻き込めていない。それがDX推進の“壁”になっているのです」(是澤氏)。
PCの各種ログを基に多岐にわたる現場の状況を可視化
そうした状況の打開に向け必要となるのは、言うまでもなく業務の現状把握だ。そのために大いに活用を見込めるツールとして是澤氏が提示したのが、同社のプロセスマイニング製品「MeeCap」である。
MeeCapを一言で説明すれば、従業員のPCログの収集・集計により業務を定量化する分析ソリューションだ。
これまで企業では、現状把握のためにアンケートやヒアリングが広く実施されてきたが、作業には手間暇を要するうえ、後者では人の主観が入り込み、正確性に難があることが課題視されてきた。「データが整形されておらず、活用しにくいことも、現場レベルの業務把握でのネックとなっていました」(是澤氏)。
対してMeeCapは、各種事象の結果であるPCログを基に、主にバックオフィス業務のプロセス洗い出しと定量化を実現する。事実ベースの分析による客観性の高さ、さらに、利用に際しての現場社員への負担の小ささも相まって、導入企業は昨年の段階で累積100社を超えており、引き続き拡大中だ。
仕組みは至ってシンプルだ。専用ソフトがPCの起動とともにログ収集を開始し、専用サーバーにデータを自動転送。分析時にはサーバーにアクセスし、蓄積されたデータをさまざまな切り口から確認するという具合である。ユーザーの負担は限りなくゼロに近い。ログとして収集するのは、アプリケーションの種類やファイル/URL、画面キャプチャ、キーボード入力値などだ。
そこでのMeeCapの最大の強みとなるのが、現場主体のデータ利用のための、使い勝手が高く、多様な可視化を実現する分析機能だ。代表的なものとして次の4つがある。
① アドバンスト分析
メンバーや部署別のPCの稼働時間とともに、アプリケーションや画面ごとの操作量と操作時間を可視化。これによりメンバーの稼働時間から操作量の多い処理までを把握できる。
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② ワークスタイル
各メンバーがいつ、どんな業務を行っているのかをタイムラインのグラフで可視化。リアルタイムで「時間を取られている業務」などを把握できる。
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③ 行動ログ
社員のアプリ利用とそこでの操作の詳細、操作時間などを照らし合わせて、各種の業務課題が具体的にどう発生しているのかを確認できる。画面キャプチャも併せて確認することで、より精緻に問題を理解できる。
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④ トランザクションカウント
「誰が」「何件」「何分かけて」「どのようなプロセス」で処理をしたかを可視化し、処理状況を把握。処理時間が長くなっていないかなどの問題点も確認できる。
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「トランザクションカウント機能では繰り返し行われる定型業務について、処理の“開始”と“終了”、案件番号を定義することで、その間に行われた作業も含めて柔軟に定量化が可能です。案件番号を設定することでより精緻な分析も実現でき、しかも画面キャプチャのOCR処理などにより、各画面での具体的な作業内容などの詳細な分析も可能になっています。処理時間ごとの案件数の分布もグラフで確認でき、処理時間が長いなどの問題業務も容易にあぶり出せます」(是澤氏)。
ログ取得が困難な従来環境でのMeeCapの有効性
MeeCapの活用を通じて成果を上げる企業はすでに数多い。例えば金融機関のA社では、トップダウンによる業務削減目標の達成に向け施策の検討に着手。効率化余地を洗い出すためのアンケートやヒアリングの手間の解消策としてMeeCapの採用を決断した。
実施項目の1つが、業務プロセスの見直しを視野に入れた商品ごとの処理時間の分析や、処理画面別の操作時間の把握だ。具体的には、前者では一連の処理を「提出書類の確認」「システム登録」「入力結果確認」などに分解したうえで各業務に要す作業量や時間を、また後者ではログにより得られた画面ごとの操作時間をそれぞれ比較していった。
「結果、特定商品や特定の画面での業務の非効率さを洗い出すことができ、年間1000時間以上の削減余地を発見できています。また、ハイパフォーマーは一般社員より1.2倍も処理能力が高いことも可視化され、解析により得られたハイパフォーマーのノウハウ共有も行われるようになっています」(是澤氏)。
また、システム更改準備で力を発揮させたのがヘルスケア企業のB社だ。同社が抱えていた課題は、実装すべき機能の見極めに向け現行システムの利用状況の把握が不可欠だったにも関わらず、機能面でシステムログの抽出が困難だったことにある。「この状況において、MeeCapはログを新たに生成するツールとしても活用できます」と是澤氏は胸を張る。
同社では得られたログを基に、部署ごとに上位20機能の操作時間を可視化。併せて、より深い分析を通じ、特定のシステムで機能不足のために表計算ソフトなどでの作業が頻発していることを把握。その知見を基に、システムの機能要件を見直すことで業務最適化につなげたという。
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多様な環境でのログによるプロセス把握の“現実解”
MeeCapでは今後、分析の深化の支援に向け、特定の業務や業界に向けた機能開発を加速させる計画だ。ログが取得しにくいSaaSや複数アプリケーションの連携環境での、より広範なログ収集の実現がその代表だ。
「ログの活用範囲は極めて広範です。人員配置やオペレーションの精緻な定量化を通じ、人員計画や育成などにも生かせるほか、コールセンター業務や事務センターなど、業務や業界ごとの最適化を通じて、顧客満足度も確実に高められます。これらの用途別のログ収集や分析の仕組みを、“幅”と“深さ”の両面で拡充していきます」(是澤氏)。
ログによる現場の多角的な可視化を実現するMeeCapは、現場主体のDXにおける確固たる礎として、活用の場をさらに拡大させるはずだ。
●お問い合わせ先
株式会社MeeCap
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