竹中工務店（本店：大阪府大阪市）は2023年3月9日、デジタルツインによる空調制御システムを開発し、名古屋市国際展示場 新第1展示館で稼働開始したと発表した。実空間のリアルタイム計測データを基に、デジタルツインで構成した仮想空間のシミュレーションによって空間の温度や風速などを推定し、空調制御を行う。きめ細かな制御が可能になるとともに、通常の方式と比較して30～70％程度の空調消費エネルギーの削減が可能としている。
大手ゼネコンの竹中工務店は、デジタルツインによる空調制御システムを開発し、名古屋市国際展示場 新第1展示館（名古屋市港区、延床面積は4万716㎡）で稼働を開始した（写真1）。
サーモカメラによる人体の表面温度など実空間のリアルタイム計測データを基に、デジタルツインで構成した仮想空間のシミュレーションによって空間の温度や風速などを推定し、空調制御を行う。きめ細かな制御が可能になるとともに、通常の方式と比較して30～70％程度の空調消費エネルギーの削減が可能としている。
写真1：名古屋市国際展示場新第1展示館の外観（出典：竹中工務店） 竹中工務店によると、建物の空調を自動制御する場合、建物内に取り付けたセンサーから得られる計測データと、室内環境の快適性の指標として設定した目標値を一致させる方法が多く採用されている。しかし、大規模な空間の場合、空間利用の障害とならないように、壁面やダクト内にセンサーを設置するケースが多いため、実際に人が滞留する空間できめ細かな制御を行うことが難しいという。
図1：実空間のリアルタイム計測データを基に、デジタルツイン上のシミュレーションによって、空間の温度や風速などを推定する（出典：竹中工務店）拡大画像表示
実空間のリアルタイム計測データとして、空調機の給気温度、給気風量、還気風量、シーリングファンの循環風量、サーモカメラから得られた人体やブースなどの発熱体の表面温度などを利用する（図1）。
通常の方式では、空調機の給気温度の実測値や壁面センサーなどで制御するが、開発したシステムでは、シミュレーションのために作成したメッシュの数だけ空間センサーを生成でき、きめ細かな空間制御を実現する。今回のケースでは、約73万メッシュ（約2.0m×1.5m×0.35mグリッド）のバーチャルセンサーで制御している。
シミュレーションの実行で得られた空間の温度・風速の推定値は、中央監視装置に送られる。同装置では快適性の評価指標であるPMV（Predicted Mean Vote）との比較を計算し、そこから実際の空調機器を制御する。シミュレーションは4～5分に1回行い、その結果を瞬時に自動制御に活用する。
