ベネッセコーポレーションは2023年5月10日、全国45自治体と「全国自治体リスキリングネットワーク」を発足した。自治体へのリスキリング支援、自治体間の情報交換推進を目的とした日本初のネットワークとなる。同ネットワークを通じて自治体間の交流を促進し、全国の中小企業、自治体におけるDX推進や市民のリスキリング推進を目指す。
実践的なリスキリングの知見・情報を共有
乳幼児からシニアまで生涯にわたる教育事業を展開するベネッセコーポレーション。社会人教育領域では、法人、自治体、大学・専門学校を対象に事業を行う(関連記事:「なんで学ぶの?」の層が4割、社会人の学習/リスキリングの現状と課題─ベネッセ調査)。
全国の自治体では、デジタルトランスフォーメーション(DX)や地域産業、人材不足への対応が喫緊の課題となり、中小企業や自治体におけるDX推進の動きが活発になっている。それらの課題に対し、ベネッセは自治体、中小企業、求職者に対し、教育プログラムを提供してきた。自治体には2020年12月から、「Udemy Business」を活用した行政・自治体向け人材育成プログラムを提供している。2023年度は、鳥取県、埼玉県、名古屋市をはじめ全国50以上の自治体で導入予定である。
また、2021年からは自治体と共に実証研究やワーキンググループを実施するなど、教育プログラムの提供にとどまらない自治体のDX支援を行っている(図1)。
拡大画像表示
同社が2021年に31自治体職員1378人を対象に実施したDX推進に関する調査では、88.6%が「部門や職員によってIT知識に差があり、話を進めるのが難しい/話を進めるのに時間を要する」、85.6%が「DXと言っても何から学ぶと良いのか、どう学べばよいのか分からない」と回答している(図2)。
拡大画像表示
自治体間で情報交換できるプラットフォームが必要
ベネッセコーポレーション 社会人教育事業本部 本部長でUdemy日本事業責任者の飯田智紀氏(写真1)は次のように述べた。「人口減少に伴い、現在より少ない職員での行政サービスレベルの維持・向上が将来的に求められていくだろう。限られた人員で課題解決にあたるために、自治体はデジタル人材の育成やリスキリングを加速していく必要がある」。
飯田氏によると、ベネッセが学びへの取り組みに対し課題を抱えた自治体にヒアリングを重ねる中で、「各自治体は似たような課題を持ちながら、課題共有やDX人材育成の先進事例を学べる機会がない。自治体間で情報交換できるプラットフォームが必要だという考えに至った」という。
このような背景から今回発足したのが「全国自治体リスキリングネットワーク」だ。同ネットワークへの参加は無料で、発足時点では福島県須賀川市、埼玉県、群馬県前橋市、石川県加賀市、愛知県名古屋市、鳥取県、広島県、熊本県など45自治体が参加する。ベネッセは自治体に特化したプラットフォームを通して、全国の自治体および中小企業におけるDX推進や市民のリスキリング支援を一層強化していく計画である。
具体的な活動内容として、まずは参加自治体が集結し、リスキリングに対する意気込みや取り組み内容を宣言する「リスキリング共同宣言」を実施。特設サイトやメルマガ配信を通じた各自治体の取り組みの発信や、テーマ別(庁内DX人材育成、地域企業のDX推進、市民のリスキリング)の分科会、エリア別の情報交換会、ワークショップなどの開催を予定する。
●Next:先行する海外事例、米国行政によるリスキリング支援施策
会員登録(無料)が必要です
- 1
- 2
- 次へ >