[事例ニュース]
そごう・西武、来店客のフロアを行き来する行動をAIカメラで分析する実証実験
2023年7月14日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)
そごう・西武(本社:東京都豊島区)は2023年7月14日、来店した顧客がどのようにフロアを行き来するのかをAIカメラで分析する実証実験を開始したと発表した。そごう大宮店の3フロア(地下1階、2階、7階)を対象に、同年5月30日から9月30日まで実施する。これまでの分析から、20代の顧客は食品売場以外のフロアを目的として来店し、ついでに食品フロアに立ち寄る「非目的買い」の傾向が強いことが判明したという。
そごう・西武は、来店した顧客がどのようにフロアをまたがって行動するのかをAIカメラで分析する実証実験を2023年5月30日から9月30日まで実施している。そごう大宮店の3フロア(地下1階、2階、7階)を対象に、AIカメラでデータを取得・分析している。これまでの分析から、20代の顧客は食品売場以外のフロアを目的として来店し、ついでに食品フロアに立ち寄る「非目的買い」の傾向が強いことが判明したという(写真1)。
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そごう・西武はこれまで、店舗全体の入店客数と、商品を購入した顧客の情報しか入手できておらず、フロアに来場している多数の顧客の情報は取得できていなかったという。
今回の実証実験では、そごう大宮店のメイン入口である2階正面入口と、集客力の高い食品売場のある地下1階および7階催事場に、計19台のAIカメラを設置した。これにより、顧客の来店目的が、食品フロアへの目的購買なのか、非目的購買(ついで買い)なのかなどを可視化する。分析結果をもとに、品揃えと店舗レイアウトの改善につなげる。
そごう大宮店でのフロア間行動分析の結果、20代の顧客の約7割が上層階の他の売場を経由して食品売場に来ていた。一方、30~60代の顧客の場合、上層階を経由して食品売場に来たのは3~5割だった。20代の顧客は、食品売場以外のフロア(上層階のロフトなどの専門店や化粧品売場)を目的として来店し、ついでに食品フロアに立ち寄る「非目的買い」の傾向が強いという。
結果を受けた今後の施策として、店内を回遊する20代の「ついで買い」を誘う仕掛けを実施する。加えて、目的を持って食品フロアに来店してもらえるように、20代の顧客に向けた品揃えや催事を開催し、若年層顧客の取り込みを目指す。
今後は、AIカメラを全館に設置していく予定である。「ECの当たり前を、リアル店舗でも当たり前にする。ECは、顧客がどこから来て、どうサイトを巡回し、何を買ったのか、あるいはどこで離脱したのかがすべて可視化される。この状態をリアル店舗でも実現していく」(同社)。
将来的には、AIカメラで取得したデータと購買データを組み合わせ、出店しているテナントにサービスの一環として提供するなど、百貨店としての新たな価値提供も目指す。
同社はこれまでにも、2022年10月から西武池袋本店7階催事場で、顧客数と属性(性別・年代)を推定する実証実験を行っている。そこでは毎年開催している「京都名匠会」に訪れた顧客の3割近くが30代以下であることが判明したという。
「物産展はメンバーズカードの対象外ということもあり、数字としての購入者データがなく、これまでは年配の顧客が多いと感覚的に想定していた。しかし、実際は若い年代の顧客も来場していることが分かった。結果を元に、若年層がより京都名匠会を楽しめるよう、抹茶のスイーツを用意したり、映えやすいものを取り入れたりといったアイデアが出ている」(同社)