[調査・レポート]

従業員エンゲージメント診断/サーベイクラウド市場が右肩上がりで成長─矢野経済研究所

人的資本経営やSDGs、ESGなどへの関心の高まりが市場拡大を後押し

2023年8月4日(金)IT Leaders編集部

矢野経済研究所は2023年8月3日、国内の従業員エンゲージメント市場の調査結果を発表し、参入企業の動向や市場の課題と展望を明らかにした。2022年の従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウド製品・サービスの市場規模は、前年比132%の66億円と推計した。市場の立ち上がり当初はスタートアップやベンチャーの導入が多かったが、近年は従業員を多く抱える大企業での採用が増えており、2ケタの成長ペースを維持している。

 矢野経済研究所は、国内の従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウド市場を調査した。市場規模は、売上高ベースで2021年に50億円、2022年に前年比132.0%の66億円と推計した。市場の立ち上がり当初はスタートアップやベンチャーが導入するケースが多かったが、近年では従業員を多く抱える大企業での採用が増えていることで、市場は2桁の成長ペースを維持している(図1)。

図1:従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウド市場における規模の推移と予測(出典:矢野経済研究所)
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 矢野経済研究所は、人的資本経営やSDGs、ESG投資などに対する企業の関心の高まりが市場拡大を後押ししていると指摘。新型コロナウイルスの感染拡大を背景としたメンタルヘルスケアなどの需要拡大は落ち着いたものの、従業員の状態を把握したいというニーズは維持されているという。

 「一方で、診断・サーベイによる従業員エンゲージメント可視化の段階から、離職率低下(定着率向上)、組織業績の向上など、市場は従業員エンゲージメントをいかに成果に結びつけられるかの段階に入っている」(同社)

 注目のトピックとして、個人のパーソナリティや体調などのコンディション面でのタイミングを配慮した機能の設計がトレンドとなっていることを挙げる。「人材が多様化する中で、企業において個人のエンゲージメントを向上させるためには、組織状態を可視化・分析するだけでは十分とは言えない。この課題が顕在化したことにより、従業員エンゲージメントサーベイを提供していた企業は、個人特性やコンディションに合った対応や行動を提案できるよう、機能を拡充している」(同社)。

 また、可視化できた従業員のデータ分析や、そこから判明した課題への改善方法の検討など、以前より人事やマネジャーの負担が増えてしまう部分に対してケアする機能がリリースされつつあるという。「1on1運用支援サービスやマネージャーのコミュニケーション支援サービスなども含め、従業員エンゲージメントを軸とした組織改革では、マネージャーにアプローチをして支援することが重要だという認識が広がってきている」(同社)。

 今後の見通しとして、2023年の市場規模が前年比121.2%の80億円になると見込む。「国により上場企業の有価証券報告書において人的資本情報の開示が義務化された影響で、従業員エンゲージメントに対する注目度は非常に高まっている。一方で、まだ具体的な開示対策の実施には至っていない企業が多く、2023年はじめには各企業において様子見の傾向が見られた」(同社)。

 矢野経済研究所は、今後、具体的な開示方法を模索する中で従業員エンゲージメント診断・サーベイの活用を検討する企業も増えてくると予測。来年の開示に向け企業の動きも活発化するとしている。ただし、従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウド単体としては、従業員エクスペリエンス管理やタレントマネジメントとの競合が激しくなっており、伸び率はやや抑えられるという。

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