ニコン(本社:東京都港区)は2023年12月26日、畜産における牛の分娩の兆候・開始を、AI画像解析で検知して生産者に知らせるIoT監視システムを開発したと発表した。熊本県内の肉牛生産者の協力の下、実証実験を始めている。NVIDIAのボードコンピュータ「NVIDIA Jetson」でカメラ映像をエッジでAI解析するIoTシステムを構築している。開発したシステムは「NiLIMo(ニリモ)」の名称でニコンソリューションズが生産者に向けて同日より販売開始し、2024年から全国に展開する。
ニコンは、畜産における牛の分娩の兆候・開始をAI画像解析で検知して生産者に知らせるIoT監視システムを開発した。熊本県内の肉牛生産者の協力の下、実証実験を始めている。
整数演算で最大100兆回/秒のAI処理性能を有するNVIDIAのボードコンピュータ「NVIDIA Jetson Orin NXモジュール」を使って、カメラ映像をエッジでAI解析するIoTシステムを構築している。開発したシステムは「NiLIMo(ニリモ)」の名称でニコンソリューションズが生産者に向けて同日より販売開始し、2024年から全国に展開する。
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開発したIoTシステムでは、分娩牛房内に設置したカメラの映像から、AIがリアルタイムで牛の分娩の兆候を検知。その結果を生産者のスタッフや獣医などのスマートフォンアプリに通知/ストリーミング映像配信する(写真1)。
IoTシステムは、カメラとJetsonで構築したAI処理デバイスで構成する。カメラは牛房内の牛を死角なく監視できるように1牛房につき標準で2台設置する。撮影された映像は2メガピクセル・30フレーム/秒の品質で生産農場内の事務所に設置したAI処理デバイスに送られ、リアルタイムに解析する(図1)。
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Jetson上で実行するAI画像解析モデルをニコンが開発している。検出対象として分娩の予兆から開始までの過程全体をカバーし、分娩前から見られる特徴的な牛の行動を検知する。分娩の予兆である運動量の変化や立ち座り回数の変化、尾上げから分娩開始を意味する羊膜の出現、子牛の足の出現までをマシンラーニング(機械学習)と行動軌跡の可視化などによって検出する(図2)。
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開発に協力している熊本県の畜産農家からは、「システムからの通知のおかげで、羊膜を被ったまま生まれた子牛を助けられた」「同様に逆子を助けられた」「スマートフォンで通知を受け取れるので、分娩予定時期でも睡眠時間を確保できるようになった」などの声が挙がっているという。
「母牛の分娩介助には多大な労力が必要になる。分娩予定日1カ月前頃から分娩牛房に移動させ、予定日10日前頃から分娩兆候を示していないかを注意して観察する。母牛のモニタリングは昼夜を問わない定期的な見回りや状態の確認が中心で、畜産農家の身体的負担やスタッフの確保が課題になっている」(ニコン)
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