食品や酒類などの卸売会社、ヤマエ久野(本社:福岡県福岡市)は2024年8月28日、AI需要予測を活用した食品自動発注システムを2024年4月に稼働開始したと発表した。倉庫における食品の発注業務において、AI需要予測によって適正な在庫量になるように自動調整する。稼働開始後2カ月の時点で、複数の熟練担当者が1日約3時間を要していた発注業務時間を約1時間半、約50%に削減した。
九州地区を中心に食品や酒類などの卸売業を営むヤマエ久野では、熟練担当者が1人あたり約3000アイテムの発注・在庫管理に約3時間を費やしていた。営業エリアの拡大や小売店の物流センターの増加によって倉庫が増える傾向にあり、発注担当者の人員不足が課題だったという。
「卸売業者は、小売店に不足なく商品を提供できるよう、日々発生する小売店からの注文と物流倉庫の在庫量を調整しながらメーカーに商品を発注している。従来は、熟練担当者が過去の発注・返品・在庫量や天候・イベント情報などの条件を考慮して需要を予測していた」(ヤマエ久野)
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こうした中でヤマエ久野は、AI需要予測を活用した食品自動発注システムを構築し、2024年4月に稼働開始した。倉庫における食品の発注業務において、AIで需要を予測して適正な在庫量になるように自動で調整するシステムで、日立製作所の「Hitachi Digital Solution for Retail/需要予測型自動発注サービス」を応用して構築した(図1、写真1)。
2024年6月末、稼働開始後2カ月の時点で、複数の熟練担当者が1人1日あたり約3時間を要していた発注業務時間を約1時間半、約50%削減したという。
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汎用倉庫の課題の中に、扱う商品が多く、需要の予測が難しいことがあるという。そこでヤマエ久野は、特定の取引先からの受注が急増しても過学習を抑制して予測精度に影響を与えないようにする「スポット特売機能」をシステムに実装。これにより、需要予測精度が安定化し、熟練担当者が算出した発注数量と同水準で発注できることを確認した。
また、各倉庫やエリアによって特性が異なることも課題で、標準化した需要予測自動発注システムでは効果の最大化が難しいという。これに対しては、倉庫のサイズや取り扱いアイテム数などに応じて最低在庫や発注頻度を自動でチューニングする機能を実装。これにより、複数の異なる拠点(4拠点)にシステムを適用することに成功した。
ヤマエ久野は今後、販売エリアを拡大するため、発注作業担当者を集約しつつ作業の生産性を高めていく予定である。物流2024年問題に対しては、仕入先からの入荷回数や仕入数をコントロールすることで倉庫内作業を効率化する。システムで算出したデータは、サプライチェーン全体の適正化にも活用する。