[インタビュー]

「DAPが投資と利用実態のギャップを埋め、デジタルの力を最大化する」─WalkMe アディカCEO

イスラエルWalkMe CEO兼共同創業者 ダン・アディカ氏

2024年9月3日(火)指田 昌夫(フリーランスライター)

企業・組織がアプリやSaaSに多額を投じても、エンドユーザーが十分に使いこなせなければ、投資に見合う導入効果は得られない──。この課題を、アプリのUI/UXを向上させる種々の仕組みで解決する「デジタルアダプション(Digital Adoption)」に注目が集まっている。イスラエル発のWalkMeは、市場の黎明期からデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)を米国を始めグローバルで提供している。同社CEO兼共同創業者のダン・アディカ氏は、導入したアプリの価値を最大化し、個人のみならず組織全体の生産性向上に資するテクノロジーとしてのDAPの重要性を訴えている。

デジタルアダプションへの注目とDAPに備わる基本機能

 デジタルアダプション(Digital Adoption)は、直訳すればデジタルの定着化だが、それを実現するデジタルアダプションプラットフォーム(Digital Adoption Platform:DAP)とは具体的にはどんな機能を有しているのか。組織における従業員、エンドユーザーの視点で見た基本機能は次のように説明されている。

 エンドユーザーが業務においてアプリケーションやクラウドサービス(SaaS)を操作中、画面にオーバーレイする形で入力候補や吹き出しの形でガイドを表示したり、逆に不要なボタンを隠したりしてくれる。こうしてアプリが、その組織の業務環境に特化した形で、元から備わるユーザーインタフェース(UI)よりも使いやすくなる。これにより、ユーザーの業務の遂行を最短距離で導くと共に、アプリの利用を定着させる。このことは、ヘルプデスクやIT管理者の負担軽減にもつながる。

 WalkMeは、イスラエル出身のダン・アディカ(Dan Adika)氏(写真1)らが2011年に創業したデジタルアダプションプラットフォーム(Digital Adoption Platform:DAP)の専業ベンダーである。創業当初は金融機関向けにFAQサービスなどを提供していたが、その後、エンドユーザー向けから社内のワークフロー分析・自動化などのツール開発に移行。社員の業務アプリケーション体験を改善するプラットフォームであるDAPへと発展していった。

 そして、2019年頃から成長が加速し、2021年には米国株式市場に上場を果たしている。デジタルトランスフォーメーションの機運と共に、WalkMeのDAPは、ネスレ(Nestle)、フィリップス(Phillips)などフォーチュン500に名を連ねる大企業を中心に各国で支持を集めるようになる。同社によると現在、フォーチュン500のうち約27%が顧客で、世界1600社以上が利用しているという。

写真1:WalkMe 共同創業者/CEOのダン・アディカ氏

 DAPが注目されている背景について、「多くの企業でDXが描いたようには進んでいない現状がある」とアディカ氏は指摘し、次のように説明する。

 「企業はDXに向けて大きな投資をして、1社あたり平均400超のアプリやSaaSといったデジタルツールを導入しています。その投資額は社員1人あたり6000ドル(約90万円)とも1万ドル(約150万円)とも言われますが、思うような効果が得られていません。そのため、『DXの取り組みは、投資に見合う価値を引き出せていない』と、ギャップを感じている経営者が多いのです」

図1:企業の多くがデジタルへの投資をうまく回収できていない(出典:WalkMe「2024 デジタルアダプションの状況」)
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 このギャップが生じている大きな理由は、ユーザーが導入したアプリやSaaSが持つ、本来のデジタルの力を生かし切れていないからだとアディカ氏は指摘。DAPを導入することで、ツールの稼働率を高めてギャップを埋め、デジタルの力を引き出すことができるというのがWalkMeの主張だ。「DAPが注目を集めている理由はここにあるのです」(同氏)。

アプリを改修せずにUI/UXを改善する仕組み

 冒頭でデジタルアダプションが何をもたらすかを記したが、アディカ氏は、WalkMeのDAPは単にアプリやSaaSの使い勝手をよくするだけのツールではないとし、「データ、アクション、エクスペリエンスの3側面で、変化に俊敏に対応しながら、組織のビジネス変革を継続的に進めるためのプラットフォームであるということ」を強調する(図2)。

図2:WalkMeのDAPの概念図と適用画面例(出典:WalkMe)
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 WalkMeではまず、各ユーザーがアプリやSaaSでどういう操作をしているかをデータとして可視化し、管理者が各アプリの稼働状況や業務プロセスの進み具合について現状を確認・分析できるようにする。

 次に、業務プロセス/ワークフローの遅延など、起きている問題を改善するために、ユーザーが操作するアプリの画面上で適切な提示がなされる。ポイントは、そうした提示が、ユーザーが触れるUI/UXの改善として行われ、アプリ自体に変更を加えないことだ。こうしたアクションとエクスペリエンスについて、IT管理者は、WalkMeの管理ポータルで効果を確認しながら業務プロセスを改善していくことができる。

 では、運用の過程で大きな問題が確認され、業務プロセスそのものを変える必要が生じた場合はどうか。手がかりがないまま仮説に基づき業務を変えることはリスクが大きい。アディカ氏はこうした局面でもDAPが有効で、「アクションの分析結果を見ながら段階的にプロセスを見直すかたちで変革を進めることもできる」(アディカ氏)という。

●Next:WalkMe(X)とは─DAPに生成AI機能が加わると何を実現できるか?

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