[市場動向]
ソフトバンク、AIと無線ネットワークを同一仮想化基盤に共存させるリソースオーケストレータを開発
2024年11月18日(月)日川 佳三(IT Leaders編集部)
ソフトバンクは2024年11月13日、AIアプリケーションとvRAN(仮想無線アクセスネットワーク)アプリケーションを同一の仮想化基盤上で動作させることが可能なオーケストレータを開発したと発表した。GPUサーバーの仮想化基盤上で、キャリアグレードのvRANと複数のAIアプリケーションの同時提供を可能にする。通信品質をAIで高める用途にも向く。
ソフトバンクは、AIアプリケーションとvRAN(仮想無線アクセスネットワーク)アプリケーションを同一の仮想化基盤上で動作させることが可能なリソース管理の仕組みを開発した。GPUサーバーを用いた仮想化基盤上で、キャリアグレードのvRANと複数のAIアプリケーションを同時提供を可能にする。例えば、通信の品質をAIで高めるといった用途に活用できる(図1)。
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従来、AIとvRANは、SLA(サービスレベル契約)やサーバーの設定が異なるため、同一基盤での動作には課題があった。「AIアプリケーションは大容量のメモリーが必要になるほか、多数のワークロードを効率的に配置して動かすことが求められる。一方、vRANは、無線の制御にあたり、超低遅延で演算処理を行うことが求められる」(ソフトバンク)。
今回、同社は異なる性質のアプリケーションを同一基盤で動かすため、Red Hat OpenShiftで仮想化基盤を構築し、これらのリソースを管理するオーケストレータを開発した。オーケストレータは、AIとvRANのワークロードに必要なカーネルや要件に合わせて、基盤の設定を制御する。ユーザーからのデプロイ要求と需要予測、供給側のリソース状況を踏まえたマッチングアルゴリズムに沿って、インフラリソースを動的に変更する(画面1)。
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オーケストレータには、生成AIアプリケーション開発基盤「NVIDIA AI Enterprise」のサーバーレスAPIを統合している。これにより、ソフトバンクが開発したAIアプリケーションだけでなく、ユーザーが用意した独自のAIアプリケーションを実行させることが可能である。
AI-RANの2026年以降の実用化に向けて富士通と提携
ソフトバンクは、AIとRAN(無線アクセスネットワーク)を統合するアーキテクチャであるAI-RANを2026年以降に実用化するために富士通と提携している。2024年10月25日には、パートナーシップ強化の覚書を締結した。両社は、RANの通信体感品質をAIを使って向上させるソフトウェアを共同で研究開発する。また、米国テキサス州ダラスにある富士通の拠点に検証ラボを設立する。
両社は、ソフトバンクが実施しているAI-RANの屋外実証実験でも協力している。富士通は、ソフトバンクが開発したvRAN L1(物理層)ソフトウェアとともに動作する、上位層のvRANソフトウェアと無線機を提供。実験では、1サーバーあたり20セルの同時通信を高品質に動作可能であることを確認している。屋外実証実験を踏まえ、AIによって通信性能を引き出すソフトウェア開発と実証に取り組む。