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経営/事業部門/デジタル部門の三位一体で挑む、荏原製作所“攻めと守りのDX”

2024年12月24日(火)神 幸葉(IT Leaders編集部)

ポンプ・タービンなどの製造で知られる荏原製作所(えばらせいさくしょ)(本社:東京都大田区)は、長期ビジョンや中期経営計画にDX戦略を組み込み、経営部門、事業部門、デジタル部門が三位一体となってDXを推進している。2024年11月12・13日開催の「CIO Japan Summit 2024」(主催:マーカス・エバンズ・イベント・ジャパン・リミテッド)に、同社 執行役 CIO(情報通信担当)の小和瀬浩之氏が登壇。「攻めと守りのDX」の体制とそれぞれの取り組みを紹介した。

会社に新風を吹き込む「攻めのDX」

 図2は荏原製作所のDXの取り組みをまとめたものだ。新規事業と既存事業、外部と社内、事業主体でビジネスモデルのデジタルシフトを進める「攻めのDX」、主にITインフラの整備に携わる「守りのDX」が4象限マトリクスに示されている。

図2:DXの取り組み(出典:荏原製作所)
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 同社では、守りのDXを担う情報通信統括部のほかに、攻めのDXの専門部門として、データストラテジーチームを新設している。データストラテジーチームは、コピーライター、映像制作、ブランディング、脳科学、データサイエンスなど多様なスキルを有したプロフェッショナル人材で構成されている(図3)。

 「情報通信統括部は、1を10~100にする部門であり、定型業務をデジタル化する部門。対してデータストラテジーチームは、0から1を生み出し、非定型業務をデジタル化する、当社に新風を吹き込む部門である」(小和瀬氏)

図3:データストラテジーチームの構成(出典:荏原製作所)
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 多彩な人材で構成されるデータストラテジーチームを中心に、荏原製作所のDXは内製中心で進められている。チーム内ではさらに戦略企画グループ、データエンジニアリンググループなどが配され、以下のような施策に取り組んでいる。

AI:80カ国語対応の生成AIアシスタント「EBARA AI Chat」の開発
デジタルツイン:工場設備環境を仮想空間に再現し、工程の組み替えの検討や熟練工のスキル継承教育に活用
データサイエンス:各種ポンプや半導体製造装置の状況監視サービスの開発
人事・人材管理:男女賃金格差や従業員の意識調査の分析
事業プロモーション:メタバースによるバーチャルイベント、社内外コミュニケーションプラットフォームの活用模索、バーチャルプロダクション(注1)による事業紹介動画の制作
マーケティング/ブランディング:データ活用によるポスターなど宣伝制作物の視認性やメッセージ性などの設計評価

注1:バーチャルプロダクションとは、映像制作において、セットの背景にリアルタイムで映像やCGIを表示したLEDボリュームを使う撮影技術。臨場感のある映像制作が可能となる。

グローバル経営を支える「守りのDX」

 攻めのDXを追求する一方で、守りのDXにも注力している。ERP(SAP S/4HANA)、CRM(Salesforce)、グローバル調達(Ariba/Concur)、タレントマネジメント(SuccessFactor)、RPA/AI(BizRobo!)などのシステム/アプリケーションが全社で導入・運用されている。

 特に、経営の要となるERPはグローバル標準システムとしてS/4HANAを導入。連邦運営からグローバル一体運営に移行することで、事業環境変化への迅速な対応、低コストオペレーション、グローバルレベルのガバナンス/内部統制強化や人材活用などを実現していく(図4)。

図4:ERP導入によって連邦運営からグローバル一体運営へ(出典:荏原製作所)
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 グローバル経営を支えるITとして、小和瀬氏は「グローバル経営情報の見える化」「グローバル業務の標準化」「柔軟性/汎用性/拡張性のある情報システム」の3点に注力しているとした(図5)。

 「日本では事業を推進するうえでITが足かせになってしまっている会社が多い。経営や事業部門が何かをやりたいといったとき、迅速に支援できるように、IT部門は柔軟性・汎用性・拡張性のある仕組みを整えて構えておく必要がある」(同氏)。

図5:グローバル一体経営の変革の目的(出典:荏原製作所)
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●Next:DX推進を後押しする経営スタイルと部門間コミュニケーション

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荏原製作所 / 製造 / 経営戦略 / デジタルツイン / 生成AI / 業務システム / SAP / S/4HANA / ERP / IT部門

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