[市場動向]

HondaとQuemix、量子コンピュータによる材料開発を高速化する「量子状態を読み出す新技術」を開発

量子状態を壊さずに特徴量をスキャン

2025年5月15日(木)IT Leaders編集部

本田技研工業(Honda)の研究開発子会社、本田技術研究所とテラスカイの量子技術研究子会社、Quemixは2025年5月14日、量子コンピュータによる材料開発シミュレーションを高速化する「量子状態を読み出す新技術」を開発したと発表した。量子状態を壊す読み出しを行わず、量子状態の特徴量をスキャンする仕組みから、量子コンピュータの実機計算に成功した。

 本田技研工業(Honda)は2050年に全企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現を目指しており、この一環としてエネルギー部材の研究に取り組んでいる。

 Hondaの研究開発子会社である本田技術研究所は、部材の研究にはシミュレーションによる材料分析が必要だが、従来のコンピュータによる計算は膨大なリソースが必要になるため、量子コンピュータの使用を検討。しかし、量子状態を読み出そうとすると量子状態が壊れてしまい、読み出し回数が増えて時間がかかってしまうことが課題だったという。

 そこで、テラスカイのグループ会社で量子コンピュータのアルゴリズムソフトウェアの研究開発を行うQuemix(キューミックス)と共に課題解決に向けた研究に取り組み、量子状態を壊す読み出しを行わずに、その特徴量をスキャンする「量子状態を読み出す新技術」を開発した。

 量子コンピュータ内に量子状態として蓄えられたX線吸収微細構造(XAFS)スペクトルデータから、古典データを特徴づける強度や形状などの情報だけをスキャンする。これにより、従来の方法では不可能だった、高速で効率的な量子状態読み出しが可能になったという。

 量子コンピュータの実機を使ったXAFS計算に成功している。Quantinuum製の量子コンピュータと、東京大学物性研のスーパーコンピュータを組み合わせ、問題をそれぞれのコンピュータに切り分けて計算する実験を行った。

 最初に東大物性研のスパコンを用いて、密度汎関数理論で結晶構造の最適化とXAFSスペクトルに重要となる活性空間の抽出を行った。続いて、量子コンピュータ実機で、活性空間に対して電子相関の効果を含んだ高精度なXFAS計算を実行した。

 量子コンピュータ上では、Quemixが開発した確率的虚時間発展アルゴリズム(PITE:Probabilistic Imaginary-Time Evolution)により基底状態を計算し、量子位相推定(QPE)を用いた応答関数の計算アルゴリズムによってXAFSスペクトルを量子状態として生成し、今回の新技術を用いて量子状態読み出しを行うという一連の計算手順をとった。これにより、XAFS計算を古典コンピュータよりも高速に実行できるようになったという。

 「実験で得られたXAFSスペクトルと、量子コンピュータ実機を用いた計算結果を比較することで、実際の原子配置や電子状態の詳細な情報を得られる。実験だけでは捉えにくい微視的な構造変化や反応メカニズムを解明する用途や、新材料の設計用途などに対して、より高精度なフィードバックが得られ、材料開発の効率が向上する」(両社)

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