[調査・レポート]

間違いだらけの日本のDX─「DX動向2025」が映す米独との“違い”と“差”

「変革」なきDXは結局のところ「改善」止まり

2025年9月22日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

日本企業のDXが直面する現実や課題を浮き彫りにした「DX動向2025」。この報告書をとりまとめた独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が国内外のDX事情に詳しい有識者4名を招聘し、その内容を解説するパネルディスカッションを開催した。日本のDXの成果がコスト削減に偏り、米独と比較して売上増加や利益向上の効果が低い理由や、その背景にある課題を指摘している。

 生成AIの活用やそのための環境整備は、企業・組織でIT/デジタル施策を担うCIO/CDOやIT部門にとって目下、最優先すべきテーマの1つだろう。

 そんな中でも、以前からのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の手を緩めてはならない。旧来の企業文化や組織風土、各種制度、ビジネスモデルなどをそのままにして生成AIの導入を進めても、散発的な利用にとどまる可能性がある。それらをデジタル時代にふさわしいものへとトランスフォームする中で、各部門や従業員が自然あるいは自発的に生成AIの活用に動くのが本筋だ。

 つまり、DXは依然として最優先のテーマと言えるが、日本企業の取り組み状況はどうか。それを知る格好の材料が、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2025年6月26日に公開した調査報告書「DX動向2025」である。日本企業におけるDXの取り組み状況や成果、デジタル技術活用の実態や推進人材の状況などを、2025年2月上旬から3月下旬にかけて調査し、結果をまとめたものだ。

 2018年に指摘された「2025年の崖=レガシーシステムがDXの足枷となる問題」を、日本企業は乗り越えられたのか、それとも転落したのかも示されている。その答えは同報告書を読んでいただくとして、本稿では、DXの取り組み状況に焦点を合わせる。

 DX動向2025の特徴は、日本企業に加え、米国とドイツの企業に同じ質問をぶつけ、3カ国のDXに関わる状況を定量的に比較した点にある。産業構造や人材流動性など、さまざまな点で日本とは対局にある米国、そして米国に比べるとより日本に近い産業構造と言われるドイツ。それらと比べて、日本のDXの進展状況はどうなのか。

 報告書にはさまざまなグラフやチャートが掲載されているが、そこから有意な事実やヒントを読み取るのは簡単ではない。表面的なデータから単に「進んでいる」「遅れている」を判断してしまう可能性もある。そこでIPAは2025年7月30日、主要な調査結果の読み方や捉え方を議論する説明会、および4人の有識者を招聘したパネルディスカッションを開催し、オンラインでリアルタイム配信した。司会進行は筆者が務め、以下4名の有識者が議論した。

  • 三谷慶一郎氏(NTTデータ経営研究所 主席研究員 エグゼクティブ・コンサルタント)
  • 宮村和谷氏(PwC Japan有限責任監査法人 パートナー)
  • 河﨑幸徳氏(経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課・地域情報化人材育成推進室長・デジタル高度化推進室長)
  • 平本健二氏(IPAデジタル基盤センター センター長)

 議論の内容が重要な示唆に富んでいたため、以下、DX動向2025の調査データと共に、ポイントとなる発言を紹介したい。なお、個々の発言にある細かなニュアンスまでを盛り込めないため、発言者は明記しない。また、パネリスト各氏に確認をとっておらず、本稿は筆者の文責において、何に対してどう語られたのかを極力忠実にお伝えする。

●Next:「コスト削減」がメインの日本、「仕組みの変革」を目指す米独

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