[調査・レポート]
人間の監督が要らない「完全自律型AIエージェント」を導入ないし検討する企業は15%─ガートナー
2025年10月7日(火)IT Leaders編集部、日川 佳三
ガートナージャパンは2025年10月2日、米ガートナーが実施した「完全自律型AIエージェント」(人間の監督を必要としない、目標主導型のAIツール)の導入状況調査の結果を発表した。検討、試験運用、導入を行っている企業は15%にとどまる。完全自律型AIエージェントの導入を阻む要因として、ベンダーが提供するセキュリティ、ガバナンス、ハルシネーション防止策への信頼の欠如があると見ている。
米ガートナー(Gartner)が「完全自律型AIエージェント」(人間の監督を必要としない、目標主導型のAIツール)の導入状況を調査した。2025年5月~6月に、北米、欧州、アジア太平洋地域で従業員250人以上の組織に所属するITアプリケーションリーダー360人を対象に調査を行い、生成AIとエージェンティックAIが企業アプリケーションに与える影響を分析している。
同社シニアディレクターアナリストのマックス・ゴス(Max Goss)氏は、「回答者の75%は、何らかの形でAIエージェントを試験運用、導入、もしくは既に導入済みと答えているが、ガバナンス、成熟度、エージェントの乱立に関する懸念が、エージェンティックAIの展開を妨げている」と指摘する。
完全自律型AIエージェントの導入を阻む要因として、ベンダーが提供するセキュリティ、ガバナンス、ハルシネーション防止策への信頼の欠如を挙げている。ベンダーのハルシネーション防止能力を高く、または完全に信頼しているとした回答は19%だった。一方、74%がAIエージェントを新たな攻撃経路になると考えており、適切なガバナンス体制が整っていると強く同意した回答は13%にとどまっている。
生産性向上は「大きいが変革的とは限らない」
AIエージェントが生産性に与える影響について、回答者の26%は「生産性に変革的な影響をもたらす」と感じているが、過半数の53%は「影響は大きいが変革的とは限らない」と回答。20%は「生産性向上の効果は限定的」と答えている(図1)。

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IT部門、業務部門、経営層の間でAIが解決する課題について、合意が取れていると強く同意した回答者は14%だった。3者で合意を形成できている組織は、AIエージェントが変革的であると回答する割合が1.6倍高く、生成AIツールに大きな価値を見出す割合は3倍以上だった。
AIが解決できるビジネス課題について共通理解を持たない組織は、AIエージェントが最も効果を発揮する領域として「オフィスツールを使った業務の生産性」を挙げる傾向が約2倍高いことも判明。一方、合意形成がある組織は、カスタマーサービス、ERP、営業など、より専門的なユースケースに注力する傾向がある。
全体では、最も影響を受ける領域の上位3つとして、アナリティクス/BIが64%で最多、次いでカスタマーサービスが55%、オフィスツールの生産性が39%だった。「オフィスツールでの生産性やデジタルワークプレイスは、エージェント活用の方向性が定まっていない組織のデフォルトだが、必ずしも最大の価値をもたらす領域とは限らない」(ゴス氏)。
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