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[調査・レポート]

“感謝日記”で働く意欲が改善する? 立命館大らが感謝とワークエンゲージメントの相関を研究

「ありがとう」の記録が職場にどんな効果をもたらすのか

2025年10月9日(木)神 幸葉(IT Leaders編集部)

立命館大学、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、NTTデータ経営研究所は2025年10月6日、日常生活の中で起こる出来事や、その対象となる人々への感謝を記録することで、働く人々のワークエンゲージメント(仕事に関連するポジティブで充実した心理状態) が向上するという研究成果を明らかにした。研究では、日々の感謝を記録する「感謝日記」が、働く人のワークエンゲージメント(仕事への活力や熱意)を高める効果を持つことが判明。職場におけるメンタルヘルスの維持、生産性の向上などにつながる簡便かつ効果的なツールとして「感謝日記」の活用が期待できるとしている。

「働きがい」と「感謝」の関係性に着目

 日本で働く人々の「働きがい」は、世界的に見て非常に低い水準にある。米調査会社ギャラップの2022~2024年調査によると、日本人の働きがいは140カ国中135位であり、その改善は喫緊の社会的課題となっている。ワークエンゲージメント(Work Engagement)が高い人ほど仕事のパフォーマンスや創造性が高く、心身の健康状態も良好であることが知られており、その向上は個人と組織の双方にとって極めて重要となっている。

 このテーマに、立命館大学、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、NTTデータ経営研究所の3組織が共同で取り組んでいる。問題意識を次のように説明している。「これまで、各所の研究で『感謝すること』が個人の幸福感や健康を高めることが示されてきたが、社会人のワークエンゲージメントに関しては、感謝との相関を示すにとどまっていた。あるいは統制群を設けなかったために、感謝の介入がワークエンゲージメントにもたらす影響は不明のままだった」

「感謝」は働く人々にどう影響するか?

 3組織の研究チームは、日々の感謝を記録する「感謝日記」というアプローチを紹介し、それが働く人々のワークエンゲージメントを高める効果を持つかを実証した。

 そもそも、ワークエンゲージメントの達成・向上とはどんな状態を指しているのか。研究チームは、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態という、オランダ・ユトレヒト大学のウィルマー・B. シャウフェリ(Wilmar B. Schaufeli)氏が提唱する定義を示し、これらから測る、従業員の仕事に対するポジティブで充実した心理状態を指すと説明している。

 研究の目的は、「感謝」という感情に注目することが、働く人々にとって重要な心理状態であるワークエンゲージメントにどのような影響を与えるのかを明らかにすること。理論的枠組みとして、「仕事の資源」と「個人の資源」がワークエンゲージメントの水準を説明するJD-Rモデル(注1)に着目。感謝に注意を向け記録することで、「仕事の資源(上司や同僚、家族からの支援など)」を再確認する可能性があると考え、日記内容の計量テキスト分析を行った(図1)。

注1:JD-Rモデル (Job Demands-Resources model: 仕事の要求度-資源モデル)とは、2001年にワークエンゲージメントのメカニズムを示すために、オランダの心理学者エヴァンゲリア・デメロウティ(Evangelia Demerouti)氏らによって提唱されたモデルである。ワークエンゲージメントを決定する要因を「仕事の要求度(仕事を進める上での負担)」「仕事の資源(上司や同僚の支援など)」「個人の資源(自己効力感など)」から捉え、これらのバランスがワークエンゲージメントに影響することを示している。

図1:JD-Rモデルにおける感謝介入とその効果についての仮説(出典:立命館大学、国立研究開発法人情報通信研究機構、NTTデータ経営研究所)
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●Next:「感謝に注意を向けて記録する」か、「日々の出来事を記録する」か

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