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大林組、高難度のダム建設で、放流状況をデジタルツイン化して3D流体解析を実施

施工時/完成後の精緻なシミュレーションにより、設計期間を4分の1に

2025年11月25日(火)日川 佳三、河原 潤(IT Leaders編集部)

大林組(本社:東京都港区)は2025年11月19日、新丸山ダム建設工事(岐阜県加茂郡、可児郡)において実施した、放流状況をデジタルツイン化し、3D流体解析による精緻なシミュレーションの取り組みを発表した。従来1年程度を要する設計・施工方法の検討期間を3カ月程度に短縮し、施工時における安全リスク評価の高度化を図っている。デジタルツインの仕組みを日立パワーソリューションズ、日立製作所と共同で構築した。

 局所的な集中豪雨の増加や台風の来襲、異常渇水などといった近年の気象状況の変化により、各所で治水・利水に重要な役割を担うダムの再開発工事が進んでいる。大林組によると、ダムの再開発工事は既存ダムの機能を維持したまま施工を進めるため、周辺施設・設備に対する放流時の入念な検討が求められ、施工時および完成後のダムの放流による影響を詳細に把握することが重要という。

 一方で、建設現場は工事の進捗によって現地状況が大きく変化するため、設計段階では施工時の現地状況を加味した放流時の状況予測は困難であるという。「現在は縮小模型を用いた実験で設計・施工方法を検討することが一般的だが、現地状況の再現度が不十分な場合、実験結果と実現象が乖離して施工時に不具合が発生するケースがあった」(大林組)。

 そうした中で、大林組は現在、新丸山ダム本体の建設工事(岐阜県加茂郡八百津町、可児郡御嵩町)を行っている。既存ダムの機能を生かしつつ20.2mかさ上げして新設ダムを建設するというプロジェクトである。現場は既存ダムと新設ダムの一部が重なる構造形式で、国内で前例がなく、技術的に高難度で先駆的なダム再生事業となっている。

図1:デジタルツイン化した丸山ダムの放流状況(出典:大林組、日立パワーソリューションズ、日立製作所)
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 今回、大林組は、新丸山ダム建設工事において、現地の最新状況を正確に再現したBIM(Building Information Modeling:建築工事情報モデリング)/CIM(Construction Information Management:土木工事情報モデリング)データを基にした、放流状況のシミュレーションに取り組んだ。施工時/完成後の放流状況を精緻にシミュレーションするためのデジタルツインを、日立パワーソリューションズ、日立製作所と共同で構築している(図1)。

 デジタルツインの仕組みの下、3D流体解析を実施して既存ダムからの放流や新設ダムの仮排水トンネルからの放流状況をシミュレーションし、設計・施工方法の検討に役立てている(図2)。

図2:丸山ダムの概観と解析対象(出典:大林組、日立パワーソリューションズ、日立製作所)
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●Next:デジタルツイン/3D流体解析を活用した建設工事のポイント

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