[ザ・プロジェクト]

年間3000億円の間接費にメス! 世界141社を統合した三菱重工の購買DX

アナログ処理のブラックボックスを解消、間接費の85%を可視化してコスト削減

2026年6月19日(金)神 幸葉(IT Leaders編集部)

エナジードメインをはじめ多角的な事業を展開する三菱重工業グループ。各社が発揮するシナジーを間接費購買領域でも最大化させるべく、ビジネス支出管理プラットフォーム「Coupa」を導入して変革を進めている。自前の推進体制により段階的に導入を進め、2024年4月からの2年間で70社への導入を行ったグローバルロールアウトを経て、最終的に世界30カ国141社への統合を2025年3月に完了。AIを活用した支出の可視化やフィリピン子会社への運用集約など、大規模な改革の全貌を、プロジェクトを主導した三菱重工業 バリューチェーン本部 SCM部 部長の岩松弘記氏に聞いた。

可視化を阻んだ手作業とアナログ処置の壁

 防衛・宇宙や原子力など多岐にわたる事業を展開する三菱重工業(三菱重工)グループでは、部品や資材などの直接材の調達・購買を主に各事業部や工場の調達部門が担っている。しかし、グループ全社で年間支出規模が約3000億円に達する間接費購買の領域には、大きな改善の余地が残されていた。

 国内では拠点ごとに購買システムが異なり、海外にいたってはExcelや手書き伝票によるアナログな処理がベースとなっている拠点も多かった。そのため、購買プロセスが分断されており、誰が・いつ・何を・いくらで調達したのかという実態をリアルタイムで把握することが困難だった。グループの購買力を活かした統制やコスト低減が十分に行えないわけである。

 三菱重工業 バリューチェーン本部 SCM部 部長の岩松弘記氏(写真1)は当時の状況を「支出の分析をデジタルで行えない分野がかなり多く、コンプライアンスやコスト抑制の面でも課題がありました」と振り返る。

写真1:三菱重工業 バリューチェーン本部 SCM部 部長の岩松弘記氏

自前の推進体制が導いた迅速なロールアウト

 これらの課題を解決すべく、間接費の調達・購買領域におけるデジタル変革に向け、ビジネス支出管理プラットフォーム「Coupa」を導入した。通常、日本の製造業におけるシステム導入は国内から順次広がるケースが多いが、Coupa導入は2018年度に米国三菱重工業(MHIA)をはじめとする北米グループ会社から始まった。

 北米への導入時には、他社を含め調達・購買システムを検討したが、岩松氏によると、選定の決め手は導入のハードルの低さであったという。「ITスキルが高くなくても設定がしやすく、必要最低限の設定をすればすぐに使用開始ができたため、北米グループ会社への導入も1年未満で完了しました」(岩松氏)

 北米での成功を受け、欧州のグループ会社へと拡大し、その成果を日本国内へ「逆輸入」する形でグローバル展開が進められた。2020年には国内のグループ会社の調達・購買管理を担う三菱重工本社に導入、コロナ禍の期間中に導入を加速させ、2022年度にかけて一気に国内グループ約50社へ展開した。

 日本に展開したタイミングで、新しい間接費調達のプロセスとして、各部門やグループ会社からの購入要求から発注、請求、会計システムへの連携までCoupa上 で完結できるようにシステムを変更した(図1)。勢いを維持したまま、2024年度からは本格的なグローバル展開を開始し、2025年3月末で、主要グループ会社の9割ほどにあたる30カ国141社へ導入を完了させた。

図1:間接費用購買プロセスの変化(出典:三菱重工業)
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 この迅速なロールアウトを可能にしたのは、ITベンダーに依存せず、SCM部とシステム関係を取りまとめるDI本部のメンバーが中心となった自前のプロジェクト推進体制である。

 導入推進にあたっては、間接費支出の可視化・統制を利かすことが可能なCoupaの利点を経営層が認め、グループ全社におけるCoupa導入の意思決定を行うことで、グループ会社へのスムーズな展開を可能にした。グローバル体制を進める上では、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の役割を外部コンサルタントに一部委任したが、実際の導入作業については自社およびグループ会社のメンバーをアサインした。

 岩松氏は自前体制のメリットをこう説く。「意思疎通が早く、決断を下すべきポイントが整理できました。自分たちでどこまでやっていいのかを明確にできることが大きなポイントでした」

●Next:支出情報の一元化による成果、オペレーション集約と内製化によるグローバル運用

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