[ザ・プロジェクト]
縦割り組織を超えて加速するJR西日本のDX─TRAILBLAZERが明かす、データサイエンス組織創成の軌跡と攻めのITへの転換
2026年4月10日(金)神 幸葉(IT Leaders編集部)
大企業の縦割り組織において、いかにDXを推進し、新たな価値を創出すべきか。2026年3月17・18日に開催された「CIO Japan summit 2026 Osaka」(主催:マーカス・エバンズ・イベント・ジャパン・リミテッド)に、JR西日本のデジタル戦略子会社であるTRAILBLAZER 代表取締役社長の宮崎祐丞氏が登壇。「縦割り組織を超えて進むDX─データサイエンス組織創成の軌跡と攻めのITへの転換」と題して、データ人材の発掘や現場と連携する組織づくりなど、実践的な変革の軌跡を語った。
JR西日本のDXを牽引─高度デジタル人材から成る新組織
JR西日本グループのTRAILBLAZER(トレイルブレイザー) 代表取締役社長の宮崎祐丞氏(写真1)は、2001年にJR西日本に入社し、約15年にわたり試験車「ドクターイエロー」などを用いた新幹線の軌道保守を担う土木技術者としてキャリアを積んできた。人口減少社会を見据えたメンテナンス体制の効率化が急務となる中、2017年ごろからAIやIoTを活用した生産性向上プロジェクトを牽引している。

デジタルを活用した新たな価値創出を進める中で、従来の新卒プロパー採用を中心とする人事制度では、高度なデジタル人材をスピーディーに確保・育成することは困難だった。大企業が持つ伝統的な組織文化や慣習を打ち破り、DXを実現していくために、2023年10月に設立されたのがデジタル戦略子会社のTRAILBLAZERである(図1)。
図1:TRAILBLAZAERの事業全体像(出典:TRAILBLAZAER)拡大画像表示
同社は2026年3月現在、約140人の社員を擁し、毎月約5人のペースで採用を拡大している。フルリモート勤務を前提に、関西に本拠地を置きながらも、社員の半数以上が首都圏に居住しており、北は札幌から南は石垣島まで、全国各地から優秀な人材が参画。多様な業界からプロフェッショナルが集う。給与水準も鉄道業界の枠を越えてIT業界の相場に合わせることで、強力なデジタル専門家集団を形成しているという。
「野生のデータサイエンティスト」の発掘
講演で宮崎氏は、JR西日本在籍時から現在までの取り組みを振り返った。同氏が2017年に技術企画部へ異動した当時、メンバーにはデータサイエンティストが1人もいなかったという。鉄道の乗降データ、交通系ICカード「ICOCA」、クレジットカード、ホテルといった消費者向けサービスの膨大なデータを統合し、クラウド環境の導入やデータ基盤の統合(WESTER会員への名寄せやIoTデータのデータレイク化)を進めると同時に、注力したのが人材確保だ。
人材確保のために行った施策の一例が、データサイエンス・コンペティションの開催である。外部ベンダーや社員に参加を呼びかけ、賞金総額200万円を用意して「北陸新幹線の車両の着雪量予測」という課題解決を競わせた結果、優秀な成績を収めたのは独学で学んでいた自社の「野生のデータサイエンティスト」だった(図2)。 「社内に才能がある人材は隠れています。くすぶっている“野生児”がいると気付き、まずはデータサイエンティストの才能がある社員を探していきました」(宮崎氏)
図2:コンペ形式でデータサイエンティストを発掘(出典:TRAILBLAZAER)拡大画像表示
なお、このコンペで上位に入賞したソースコードは、賞金と引き換えに買い取り、実装を進めた。2018年12月に金沢支社で稼働を開始したAIモデルは、現在敦賀駅まで新幹線が延伸したことに伴い、AIの学習の場が歪んでおり、モデルの再構築に取り組んでいるという。
●Next:データ分析を推進する体制づくりとAI活用、JR西日本におけるデータ×AI実装事例
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