今だからこそ必要な「攻めの発想」と「ビジネス視点」経営陣や現場と対話し、IT部門の価値を示す
2009年4月1日(水)CIO INSIGHT
世界的な景気後退を受け、IT投資の削減を余儀なくされる企業は少なくない。だが、経営陣からの要請のまま、単純にコストカットにまい進するのは考え物だ。CIOやIT部門は、社内横断的な人脈や業務革新の知見を生かし、価値を生み出すIT戦略を提示することが求められている。その点で大切なのはメリハリのきいた透明性の高いIT投資である。景気後退のトンネルを抜けた先で、アクセルを踏み込める体制を築くことを忘れてはならない。(翻訳 : 古村 浩三)
2008年の後半から続く景気後退は、今年も企業のIT投資に影を落とす。米投資銀行のゴールドマン・サックスは、先進国における企業のコンピュータやソフトウェア、サービスに対する支出は、前年比8%下降すると予測している。ここ6年間で最大の下落幅だ。さらに住宅・雇用問題や消費衰退は2010年まで尾を引き、政府予算も膨大な赤字が避けられないとしている。
こうした中、コスト削減や業務効率向上が改めて脚光を浴びている。企業が、ヒト・モノ・カネといったリソースの節約や、コストの合理化の必要性を再認識し始めたことが背景にある。これらの施策においてノウハウを蓄積しているのは、他でもないIT部門だ。業務や部門を横断した知識や人間関係を持つIT部門の役割は、かつてないほど重要となっている。
CIO INSIGHTは、不況下の2009年を乗り切るプランについて、3人のCIO(最高情報責任者)に取材した。有数の地方銀行であるBB&TのCIO、ポール・ジョンソン氏は、ビジネスや顧客の視点でメリハリあるIT投資戦略を描くことの重要性をあたらめて指摘する。健康・衛生用品など個人向け消費財の大手メーカー、キンバリー・クラークのCIOであるラモン・バエズ氏は、困難な時期ほど、ITリーダーが挑戦の意欲を持ち続けることによりIT部門の価値にスポットライトが当たると強調。さらに保険会社チャブのCIO、ジェームス・ナイト氏は、CIOがビジネス戦略の展望を明確にすれば、プロジェクトの継続だけでなく、全社的な費用対効果の向上を実現できるとする。
不況により重要性を増す
ビジネス視点のIT投資
景気状態がどうであれ、IT投資の対象は慎重に選択すべきだ。もちろん、業務や業種によって必要となる取り組みは異なるので、「これさえやっておけばよい」という万能解はない。ただし、取捨選択に共通する物差しはある。その投資が「ビジネスの価値向上に直結するか否か」だ(図1)。
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