「適材適所」を可能にするアーキテクチャの全容 新たなコンピューティングスタイルとして、「クラウドコンピューティング」が脚光を浴びている。クラウドの実現形態の1つである「SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)」によるITインフラの維持管理コスト抑制など、ユーザー企業がクラウドに寄せる期待は大きい。半面、戦略なきクラウド化は業務処理の自動化を妨げるといった弊害を引き起こしかねない。企業はいかにしてSaaSを活用し、クラウドの利点を享受すべきか。協和発酵キリンの考え方を解説する。
社内におけるコンピューティングスタイルの歴史を振り返ると、大きく3つの時代に分けられる。1970年代〜80年代後半まで主流だったメインフレームによる集中処理、80年代中盤〜2000年頃までのミニコンからWindowsサーバーに至る分散処理、そして2000年〜今日に至るオープンシステムの集中処理だ。エミュレーションからクライアント/サーバー(C/S)、Webへと変化を遂げてきた(図1)。
こうしたスタイルの変化はネットワークの高速化がもたらしたと言っても過言ではない。この30年間でデータ通信速度は9600bpsから100Mbpsに、約1万倍に速まった。今も変化は留まるところを知らず、第4のコンピューティングスタイル、すなわち「クラウドコンピューティング」の時代がすぐそこまできている。
クラウドについて考える前に、情報処理の目的を今一度確認しておきたい。70年代、ユーザー企業は社内の業務処理を自動化するためにメインフレームを導入してきた。90年代になるとパソコンやWindowsが登場してオープン化が進み、ユーザーインタフェースこそ変化したが、「業務処理を自動化する」という目的は大きく変わっていない。
突き詰めて考えると、ユーザー企業にとって情報処理の最終的な目的は「業務を遂行すること」なのである。業務アプリケーションを実行する上で必要なインフラの維持管理ではない。まして、OSのバージョンアップやウイルスの駆除は、ユーザー企業に直接的な恩恵をもたらすものでなない。
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