プライム比率の向上、コスト管理強化など体質改善で苦境を脱する[富士ソフト 証券コード9749]
2009年9月24日(木)長橋 賢吾(フューチャーブリッジパートナーズ 代表取締役)
富士ソフトの株価が5月の09年3月期決算以降、堅調だ。2月10日の最安値1282円から6月15日に年初来高値2010円まで60%近く上昇した。背景には何があったのか? 同社の業績、および同社を取り巻く環境をもとに、考えていきたい。
八方ふさがりの受託ソフト開発
富士ソフトの中核事業は受託ソフトの開発。内容としては、(1)携帯電話、自動車、デジタル家電などの組込系ソフト開発、(2)金融機関、流通、製造業などの業務系ソフト開発、(3)それ以外のソフト開発、の3つの分野であり、連結売上高 1650億円(09年3月期実績)のうち、1345億円(売上比率 81.5%)を占める。
だが同社の受託ソフト開発を取り巻く環境は極めて厳しい。厳しい背景の引き金は、08年後半からの金融危機に始まる100年に1度とも呼ばれる不況である。これによって、(1)組込系ソフト開発においては、自動車・デジタル家電といった業種での大幅なIT投資抑制、(2)業務系では主要発注先である金融機関のIT投資抑制に加えて、プライムコントラクター側で外注を使わず、内製を強化する方向、という状況になっている。受託ソフト開発会社に業務委託しなければいけない仕事が確実に減っているわけだ。
これを端的に示しているのが、図1の主要受託開発企業の業績推移である。前期については、大型案件で業績を拡大したソラン以外はすべて減収減益、今期の会社計画においてはすべての企業が減収減益を見込んでいる。こうした八方ふさがりとも言える受託ソフト開発において、どのように成長戦略を描くのか、これが情報サービス企業の経営戦略の要諦と考えられる。
富士ソフトの成長戦略
こうした状況下での富士ソフトの成長戦略は、(1)プライムビジネスの拡大、(2)コスト管理の強化、(3)新規ビジネスの拡大、の3点である。(1)については、いわゆる下請けではなく、顧客から直接プロジェクトを受注し、システムを構築するプライムビジネスを強化する。前述の3分野のうち、組込系に関してはすでに顧客から直接受注し、開発する方式がメインだが、業務系は富士通やNEC、日立といったメーカー系、あるいはNTTデータ、野村総研など大手システムインテグレータからの下請けの比率が高い。業務系ソフトウェア開発でのプライム比率を70%に上昇させることを目標としている。
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