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私の本棚『小村寿太郎とその時代』ほか、積水化学工業 寺嶋一郎氏が選ぶ3冊

2009年12月28日(月)IT Leaders編集部

1冊の本には、それを著した人の人生観やノウハウが詰まっています。わずか数時間でそれを学べるんですから、読書はやめられません。休日、自宅で寝転びながら本を読んでいるひとときは何にも代え難い。

光ある愛の星にアセンション光ある愛の星にアセンション
アマーリエ 著
ISBN:978-4199060403
徳間書店
800円

1冊の本には、それを著した人の人生観やノウハウが詰まっています。わずか数時間でそれを学べるんですから、読書はやめられません。休日、自宅で寝転びながら本を読んでいるひとときは何にも代え難い。

人がどう生きたのかを描いた歴史書や評伝が好きです。例えば司馬遼太郎。「竜馬がゆく」「坂の上の雲」といった数々の名著を読むと、明治とは優れた人物を数多く輩出したすごい時代だったことが分かりますよ。岡崎久彦氏の「小村寿太郎とその時代」や「幣原喜重郎とその時代」も愛読しています。岡崎氏の著書はどれも、主観や印象に流されず、人物や時代背景を事実に基づき客観的に描写している。読みながら、その時代を鳥瞰できる点がすばらしいですね。

話を現代に移すと、ここ数年は歴史的に見ても大きな節目の時だと感じます。経済は本来、人間主体であるべきで、お金は手段にすぎないはずです。ところが、資本主義が進展するうちにそれが逆転し、人間がお金のために働くようになってしまった。その結果が、2008年に起きたリーマンショックというわけです。

実際、多くの人が資本主義の限界に気づき始めています。「資本主義はなぜ自壊したのか」は、象徴的な1冊でしょう。著者の中谷巌氏は、かつてグローバル資本主義を先導し、小泉改革への道筋をつけた経済学者です。その中谷氏が、同書では行き過ぎた市場中心主義が日本企業にもたらした弊害を明らかにしているんです。中谷氏は自ら、この本を「懺悔の書」と呼びます。

では、我々はこの先どうすればよいのか。そんな問いに1つの答えを示してくれるのが、「目に見えない資本主義」です。お金という目に見える価値を追求する貨幣経済の次には、目に見えない価値を重視する社会がやってくる。著者はそう述べます。そうした社会では、社会貢献度を高めることが企業の価値向上につながるようになると言うんです。ヘーゲルの弁証法を援用した主張には、説得力があります。

ソフィーの世界」や「アウト・オン・ア・リム」など、哲学や精神世界に関する書籍もよく読みます。「どう生きるべきか」「何のために生きているのか」への示唆を得られるので。私たちはみんな何らかのミッション、大義を持って生まれてきているんだと思うんです。それが何か分からないと、人はちゃんと生きられないんじゃないかな。このジャンルでおすすめの1冊を挙げるなら、「光ある愛の星にアセンション」です。

先ほどから「人間」という言葉をたくさん使ってきましたが、人間への興味は本当に尽きません。人間を描いているという点で、映画も好きです。実は、映画監督を志したこともあるんですよ。学生時代は、毎日のように名画座に足を運びました。ベルイマンにフェリーニ、マストロヤンニ…。巨匠の作品を、年間数百本は見ましたね。邦画だったら、やはり黒澤明でしょうか。「生きる」や「七人の侍」には、大義を持って動くことの強さを教えられます。

小村寿太郎とその時代

岡崎久彦 著
ISBN:978-4569579542
PHP研究所
960円

目に見えない資本主義

田坂広志 著
ISBN:978-4492395189
東洋経済新報社
1680円

 

寺嶋 一郎氏
寺嶋 一郎 てらじま・いちろう
積水化学工業 コーポレート 情報システムグループ長
1979年に入社し、生産管理システム構築に従事。米マサチューセッツ工科大学留学後の85年には情報子会社の設立に参画し、人工知能を応用した工業化住宅のシステム化を手がけた。2000年から、本社システム部門の長としてITガバナンスの改革に取り組んでいる
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