[河原潤のITストリーム]

「ライフ>ワーク・バランス」を目指して:第7回

2010年2月17日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)

内閣府が2009年12月に実施した、ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査(全国の20歳~59歳の男女2,500人を対象)の集計結果が2月初めに公表されました。政府、地方公共団体、産業界の合意によって「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が制定されたのが2007年12月。その後2年間でワーク・ライフ・バランスの考え方がどのぐらい世に浸透し、働く人々の生活にどんな変化をもたらしたのかがうかがえる結果となっています。

 いくつかの項目の回答結果を紹介しましょう。まず、「ワーク・ライフ・バランスという言葉を聞いたことがある」と回答した人は全体の54.3%。前回調査時(2009年3月)の48.2%を超え、今回、初めて過半数に達しました。ただし、「言葉も内容も知っている」人となると、全体の2割弱(18.9%)にとどまります。

 次に、「1年前と比較した生活時間の変化」については、「仕事の時間が減った」と回答した人が22.8%で、「仕事の時間が増えた」とした人は27.7%と、仕事の時間が増えたという人のほうが多かったようです。また、前者の理由として57.3%の人が「経済情勢の悪化による業務量減少」を挙げ、後者の理由として35.0%の人が「採用減等による業務のしわ寄せ」を挙げており、いずれも昨今の経済情勢の影響が現れた形となりました。

 調査では、ワーク・ライフ・バランスが実現された社会に近づくために、企業はどのような取り組みを行うべきかについても尋ねています。最多だったのが「社長や取締役がリーダーシップを発揮して取り組む」(23.4%)という回答で、以下、「無駄な業務・作業をなくす」(13.6%)、「管理職の意識改革を行う」(12.0%)、「給料を上げる」(9.8%)、「育児・介護休業をとりやすくする」(9.4%)の順で続きます。この項目の結果から、トップダウンそして管理職による強力な推進なくして、ワーク・ライフ・バランスは実現できないと多くの人が考えていることがわかります。

 ご存じのとおり、ワーク・ライフ・バランスの実現にあたっては、企業のIT部門も重要な役割を担っています。在宅勤務(テレワーク)を支えるITには、ノートPCやPDA、携帯電話、スマートフォンなどのモバイル・デバイス、ビデオ会議システム、シン・クライアント、VPNなどがあります。業務生産性の向上という目的に加え、ワーク・ライフ・バランスの観点からも、これらのITがどのような効果をもたらすのかを十分に検討することが、今後はより求められることになるでしょう。

 その際には、単に、テレワーク環境を整えるだけではなく、オフィス勤務時の対面でのコミュニケーションをどう補っていくのかも重要な課題になると言われています。イントラ・ブログや社内SNSのような、社員間の円滑なコミュニケーション/コラボレーションや暗黙知の共有を促進するソーシャル・ネットワーキング技術は、この課題に対しても有効な一手となりそうです。

 ところで、「ワーク・ライフ・バランス」って、言葉としてやはり「仕事」のほうが先にくるのですね……。ささいなことかもしれませんが、“充実した生活があってこそ成しえるいい仕事”という意味をぜひ強調したく、個人的には「ライフ>ワーク・バランス」と叫んでみたいと思います。

河原 潤(かわはら じゅん)
ITジャーナリスト/IT Leaders 編集委員。
1997年にIDG入社。2000年10月から2003年9月までSun/Solarisの技術誌「月刊SunWorld」の編集長を務める。同年11月、「月刊Computerworld」の創刊に携わり、同誌の編集長に就任。エンタープライズITの全領域を追いかける。2008年11月、「月刊CIO Magazine」の編集長に就任。CIOの役割と戦略策定、経営とITのかかわりをテーマに取材を重ねる。2009年10月にIDGを退社し、ITジャーナリストとして始動。
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