ユーザーの業務ニーズや時代に適合できないことから、システム部門の抜本的な変革を求める声は、古くからあった。1990年代初めくらいの専門雑誌や出版物にはこんなタイトルが目立った。
- 「ダウンサイジング時代をむかえ、解体を迫られるシステム部門」(1993:野村リサーチ)
- 「解体そして再生の道探る情報システム部門」(1993:日経コンピュータ)
- 「変革を迫られた情報システム部門の実像〜情報システム部門が崩壊する〜」(1994:戦略コンピュータ)
「解体」や「変革」、「崩壊」、「再生」などと過激な言葉が躍っている。1990年代は、バブル経済崩壊で今のように景気低迷が続き、ダウンサイジングや分散システムに伴うEUC/EUDの幕開けの頃である。しかしその時代背景だけから、これらの記事が書かれたわけではないようだ。保守的で変革できないシステム部門の体質は、それ以前から問題視されていたのだ。
自己改革は自己否定から始まる
1990年代後半以降、インターネットの普及とともに情報通信技術が著しく進展し、利活用の形態も様変わりした。変化に対応すべく、システム部門の改革に取り組んだ企業も少なくない。しかし20年近くも経て、なおこの問題が指摘されているのは一体どうしたことなのだろう。Googleで「システム部門 変革」を検索すれば100万件もヒットし、「適切な業務と役割が果たせていない」という指摘が多い。これほど目の敵にされている企業内部門も珍しい。
筆者はシステム部門の責任者になってから、システム部門の実態を肌身に感じた。個々のメンバーは総じて優秀であり、人知れずハードな仕事もしている。しかしその認知は経営者からも事業部門からも高くない。頼まれごとは従順にこなす。しかし現場にはあまり行かない。
自らコードを書いたり試作したりといった姿もほとんどなく、外注依存度が高い。実態はITスキルとは関係の薄い外注や情報子会社の管理、調整業務に追われている。今から25年以上前の、メインフレーム時代に垣間見たシステム部門とは異なっていた。企業ITの専門家として、仕事に対する自信や自負が感じられないのだ。
会員登録(無料)が必要です
- DXを推進するなら「情報システム部門」を根底から見直せ!(2024/10/30)
- 「建設DX」の実態と、厳しさを増す持続可能性(2024/10/02)
- 過剰なハラスメント意識が招く日本の萎縮(2024/08/27)
- 日本の死生観の変化がもたらす将来(2024/08/07)
- 銀行窓口業務の効率化、なぜ今もできない?(2024/06/24)