[河原潤のITストリーム]

ワークロードの違いに着目してシステムの効率性を高める:第22回

2010年8月11日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)

2010年7月23日、IBMはハイエンド・サーバーの最新機種「IBM zEnterprise」を世界同時発表しました。2008年2月発表の「z10」の後継となる同社製サーバーの最上位モデルは、クロック周波数、最大搭載CPU数、プロセサコア数が引き上げられたメインフレーム・サーバー「IBM zEnterprise 196(z196)」、z196に接続して利用するx86およびPOWER7ブレード搭載の拡張サーバー「IBM zEnterprise BladeCenter Extension(zBX)」、z196とzBXの混在環境においてリソースを一元管理するソフトウェア「IBM zEnterprise Unified Resource Manager(URM)」によって構成されています。

IBMが「次の10年に向けた、企業コンピューティングの再定義」(米国IBM システム&テクノロジー・グループ 開発/製造ゼネラル・マネジャーのAmbuj Goyal氏)と表現するzEnterpriseの投入は、同社が以前よりサーバー/ストレージ製品の提供に際して掲げる「ワークロードの最適化」の取り組みの集大成ととらえられます。今年に入ってIBMは、UNIXサーバーの「Power Systems」、x86サーバーの「System x」サーバーの両ファミリを共に刷新しましたが、そのときから製品開発の背景として同社が説明してきたワークロードの最適化の考え方に納得がいったので、(それがIBM製ハードウェアの優位性にどうつながるかの詳細は省きますが)ここであらためて整理してみます。

ここで言うワークロードは、企業のデータセンターで稼働される各種業務アプリケーションの特性(の違い)のこと。今後は、RFIDやスマート・グリッドなどの技術の進展で、企業システムが扱うデータ/トランザクションの量がより増大し、膨大なデータを活用する新しいタイプのアプリケーションの出現も予想されています。そうした中で、ワークロードの最適化とは、アプリケーションの特性ごとに最適な処理の仕組みを適材適所で設けることで、全体の処理効率を高めていく考え方であると説明されています。

IBMは、同社の顧客企業へのヒアリングの結果を基に、現在そして今後の10年間に企業のITインフラが対応しなくてはならないワークロードの4タイプを定義しています。1つめは「トランザクション処理/データベース処理」で、拡張性や高いサービス品質、ピーク対応、継続性、柔軟性が要求されます。具体的には、データベースやデータ・ウェアハウス、OLTP、バッチ処理などのアプリケーションが該当し、このワークロードでは高い並列処理能力を持ったスケールアップ型のシステム・アーキテクチャが最も適しているとされています。

2つ目は「ビジネス・アプリケーション」で、拡張性や高いサービス品質、柔軟性が要求されるワークロードで、ERP、CRM、開発環境/ツールなどが該当します。データI/O量やトランザクションはそれほど多くありませんが、リアルタイムでの高い演算処理能力が要求されるため、大容量のシステム・メモリが必要になります。このワークロードも、スケールアップ型のアーキテクチャが適しています。

3つ目は「アナリティクス」で、データ・マイニングやエンタープライズ検索のような分野のアプリケーションが該当します。このワークロードでは、浮動小数点演算/10進演算を含む高い演算能力と、高速・広帯域なシステム・メモリが要求されます。データI/O量がきわめて膨大なのに加えて、1つ1つの処理が細かく独立しているという特性を持つので、スケールアウト型のアーキテクチャで、かつ、CPUリソースを分割する並列処理が有効になります。

4つめは「Web/コラボレーション/インフラ」で、システム管理やWebサーバー、ネットワーク、ファイル印刷といった分野のアプリケーションが該当するワークロードです。いわゆるスループット指向で、大量のトランザクションに対する高い並列処理性能が要求されるので、ここでもスケールアウト型のアーキテクチャが適しています。

冒頭で触れたzEnterpriseは、異機種混在環境を1筐体内にまるごと格納することで、上記の4タイプのワークロードすべてに対応し、その運用管理も1筐体のみに対して行えばよく、それにかかるコストも大幅に削減が可能、というアピールがなされています。製品の価格帯からすると、同機種の導入を検討する企業はz10と同様、限られてきますが、今後、企業ITインフラ内での適用領域がさらに広がっていくであろうクラウド・サービスの採用も含め、ワークロードごとの特性を踏まえて効率性の高いシステム/データセンター構築に臨むという考え方自体は、ITインフラの規模やIT予算の大小にかかわらず、より重要になっていくのではないでしょうか。

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