[市場動向]
“異常時”の行動と知恵を通してIT部門の真価が問われた─東日本大震災を3つの視点で振り返る
2011年5月31日(火)川上 潤司(IT Leaders編集部)
誰もが経験したことのない大きな災害に企業が直面した時、情報システム部門はどれだけ存在感を示せたのだろう。 緊急時の頼れる陣頭指揮官だったのか。それとも、融通の利かない事務方だったのか。 3つの視点で震災を振り返って見よう。川上 潤司[ 編集部 ]
2011年3月11日、午後2時46分。三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が東日本エリアを急襲した。企業の本社が集中する首都圏も激しく揺れた。週末に向けた華やいだ雰囲気は一転し、緊急体制が敷かれた。
従業員の安否確認、自社施設の実態把握、取引先/協業先との連絡などの一方で、当座の善後策を定めて各所に周知徹底する─。いわゆる事業継続計画(BCP)が、多くの企業で発動された瞬間だった。
事業遂行とITは密接に絡んでおり、情報システム部門が大きな使命を担ったのは言うまでもない。とはいえ未曾有の地震がもたらしたのは非常事態を超えた“異常事態”。日頃の備えが通用しないケースも頻発し、情報インフラの復旧や例外的な業務処理への対応に多くの担当者が奔走した。
経営幹部を中心に事業継続の知恵を絞る切迫した局面において、「はからずも情報システム部門の実力が問われることになった」(ツムラ情報技術部の佐藤秀男部長)という声は少なくない。システムのBCPが焦点ではない。ITが企業活動の中枢を担う今、事業その他の継続と企業の社会的責任を果たすことが情報システム部門の役割となる。
現場では何が起きたのか。そこから何を学べるのか。その教訓は、今後の情報システム(部門)のあり方、ひいては“屈強な企業”につながるヒントがあるはずだ。3つの視点で、震災を振り返ってみよう(図1-1)。
視点 1
BCP実行の司令塔に参画できたか
情報システム部門は、複数の事業組織を横断する(時には企業を超えたサプライチェーン全般の)ビジネスプロセスを把握している立場にある。だからこそ被災状況を集約する際には、漫然とではなく優先順位をつけて臨める。理にかなった緊急措置を練る上では、その「全体掌握」の知見が役立つ。それを実行に移す場面では、各所にいる人脈を活かして調整や説得に回れる。大きなポテンシャルと期待があるのだ。
BCPにおいては「社会的責任の全う」という側面があることも忘れてはならない(図1-2)。例えばホンダは、Googleやパイオニアと協力して、被災地周辺で通行実績がある道路の情報をGoogleマップ上で提供。3月14日公開という迅速さも際立ち、同エリアに向かう人々から高い評価を得た。こうしたアクションも、ITに詳しい人材のアイデアと行動力なしには出てこない。
そんな中、もし“インフラ継続”で手一杯、あるいはそれにしか意識が回らない情報システム部門があったとしたら、大きな反省材料だ。「情報システム部門の“社内的責任”を強く噛みしめ、どのように貢献できたか(すべきか)を今一度振り返っておく必要がある」。こう指摘するのは、リスクマネジメントに詳しい、あずさ監査法人ビジネス・アドバイザリー事業部の澤田智輝氏だ。
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