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[GDO、社内システム 刷新への道]

GDO G10プロジェクトに大問題が発生─業務部門の意識改革を迫る

同時進行ドキュメント!GDO、社内システム刷新への道 Part13

2011年6月9日(木)IT Leaders編集部

震災の影響で5営業日の遅れが発生したG10プロジェクト。遅れを確実に取り戻しながら、予定するテストや移行リハーサルをすべて完遂しなければならない。そんな奮闘を続ける中で、大きな問題が発覚した。

主管部門が当事者意識を欠いた

プロジェクトメンバーと業務部門のキーパーソンによる総合テストが完了したのは、4月7日。テストの結果、少なくない数のバグや仕様変更が報告された。

だがIT戦略室の志賀智之室長は動じなかった。「この段階で問題が出るのは当然。むしろ出ない方が不安だ」(同)。バグに関しては修正を施すよう指示し、仕様変更は今回のプロジェクト中に取り込むか、先に延ばすかを淡々と切り分けていった。「機能的にはともかく、できればこうしたい」という、いわゆる“nice to have”の変更はすべて先送りとした。実はその裏で、プロジェクト全体を揺るがしかねない重大な事態が進行していた。

総合テスト中、SAP ERPやワークフローなどの導入を担当する会計/情報流通基盤チームにおいて問題が顕在化した。業務課題の抽出やイレギュラー対応、業務フローおよび責任所在の明確化、操作性の改善指摘など、総合テストでやるべきことは多い。それらが一向に進まなかったのだ。SAP ERPの操作に対する習熟度も低いままだった。

原因は明白だった。このシステムを主管するはずの経理部門に、当事者意識や新たな業務への理解が欠けていたという。同部門は業務が多忙であるという理由で、総合テストにも十分な時間を割いていなかった。「『自分たちがやらなくても、誰かがシステムと業務を作ってくれる』という甘えもあったと思う」(大日健CIO)。

「今、経理側が本気でやらなければ、いつやるんだ。このままリリースしたら、間違いなく業務が停止してしまう」。志賀室長はそう直感した。知らせを受けた大日CIOは、ことの深刻さをすぐ理解。経理部門に、現行業務を見直して総合テストに時間を割くよう迫った。さらに、会計システムのプロジェクトオーナーであるCFO(最高財務責任者)専用のテストシナリオを作成。CFOが完全に納得するまで、テストを繰り返すことを決めた。

こうして経理部門の関与を取り付けたものの、チームにはすでに大きなタイムロスがのしかかっていた。しかもこの時期、経理部門のキーパーソンが交代したことにより、さらなる手戻りを余儀なくされた。どう取り返すか。志賀室長は、同チームに人員を集中投下して巻き返しを図った。最終的には他チームと同時期に総合テストを収束させた。

移行手順をチューニング

G10プロジェクトは4月末現在、総合テストに続いて全社員によるユーザー受け入れテストを実施中だ。5月中に終える予定という。このテストでは、移行リハーサルで実際に移行した実データを用いている。並行して、推進チームはシステム全体の応答性能や多重負荷、運用監視/障害回避、セキュリティなど非機能要件のテストに着手。セキュリティテストには、専門業者が実際に外部から攻撃するブラックボックス方式を採用した。

一方で、入念な移行準備も進めている。3月末〜4月初旬に実施した前述の移行リハーサルでは、現行システムから新システムに切り替えるための一連の手順を、開発環境上でシミュレーションした。移行の確度を高めるとともに、システム品質を担保するために外すわけにはいかない重要な作業だった。推進チームはリハーサル結果を精査し、作業全体のクリティカルパスを明確化。ボトルネックとなっている部分を見つけ出し、移行期間を最短に詰められるように手順を組み替えた。5月に実施する2度めの移行リハーサルで、新たな手順を試行する。

業務担当者が本気になった

プロジェクト終盤を迎え、GDO社内の空気に変化があったことも報告しておきたい。「これまでは、G10プロジェクトをどこか他人事と考える業務担当者もいた。だが、稼働期限を目前にして彼/彼女らの目の色が変わってきた」(志賀室長)。

新システム導入に失敗すればたちまち業務が滞り、甚大な損失を生む。自らの手を動かして受け入れテストに当たるなかで、そんな危機感が芽生えてきた。「開発を済ませた今、我々プロジェクト側にできることは少ない。数カ月後のゴールを目指し、頼れるのは業務部門のパワーだけ」。志賀室長はそう語る。

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