震災の影響で5営業日の遅れが発生したG10プロジェクト。遅れを確実に取り戻しながら、予定するテストや移行リハーサルをすべて完遂しなければならない。そんな奮闘を続ける中で、大きな問題が発覚した。
主管部門が当事者意識を欠いた
プロジェクトメンバーと業務部門のキーパーソンによる総合テストが完了したのは、4月7日。テストの結果、少なくない数のバグや仕様変更が報告された。
だがIT戦略室の志賀智之室長は動じなかった。「この段階で問題が出るのは当然。むしろ出ない方が不安だ」(同)。バグに関しては修正を施すよう指示し、仕様変更は今回のプロジェクト中に取り込むか、先に延ばすかを淡々と切り分けていった。「機能的にはともかく、できればこうしたい」という、いわゆる“nice to have”の変更はすべて先送りとした。実はその裏で、プロジェクト全体を揺るがしかねない重大な事態が進行していた。
総合テスト中、SAP ERPやワークフローなどの導入を担当する会計/情報流通基盤チームにおいて問題が顕在化した。業務課題の抽出やイレギュラー対応、業務フローおよび責任所在の明確化、操作性の改善指摘など、総合テストでやるべきことは多い。それらが一向に進まなかったのだ。SAP ERPの操作に対する習熟度も低いままだった。
原因は明白だった。このシステムを主管するはずの経理部門に、当事者意識や新たな業務への理解が欠けていたという。同部門は業務が多忙であるという理由で、総合テストにも十分な時間を割いていなかった。「『自分たちがやらなくても、誰かがシステムと業務を作ってくれる』という甘えもあったと思う」(大日健CIO)。
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